リバース: クラッシュ2・魂の戻る場所 (幻冬舎文庫 お 12-2)

著者 :
  • 幻冬舎 (2006年2月1日発売)
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感想 : 7
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本書『リバース(Re-birth)』は、「日本一のフェラーリ遣い」と言われ、1998年に富士スピードウェイの多重クラッシュ事故で瀕死の重傷を負った太田哲也選手が、事故後の1年間を自ら記したノンフィクション『クラッシュ』の続編である。事故から3年後に岡山のT1サーキットで、1万4千人のファンの前で再びフェラーリを走らせるまでの2年間が描かれている。
本書には、『クラッシュ』を書く決心をしたものの、なかなか思い通りに進まなかったことも出てくるが、最終的に「絶望していた時期に僕の心の支えになったのは、偉い人の話ではなかった。僕を励ます言葉でもなかった。そばにいて手を握ってくれる人の存在だった。僕と同じように厳しい状況の中で悲しみを抱えながらも、前を向こうと努力している人たちの「姿」に励まされた。僕は突然のしかかってきた痛みに対して怒ったし、悲しんだし、八つ当たりもしたし、ひねくれたりもした。人には言いたくないカッコ悪い部分や恥ずかしい面がいっぱいある。他人には絶対に打ち明けたくない。けれど、もし正直に自分の「姿」を見せれば、今度は僕のほうから励ませるのではないかと思った」という心境に至ったことにより、書き上げることができたという。
また、あとがきでは、『クラッシュ』と『リバース』の間の自らの心の変化、そしてその結果としての双方の違いについて、「できない事実を受け入れていく過程を前作『クラッシュ』では書いた。そこからできることを見つけていく過程が『リバース』だ。そこには喜びがある。僕が本当に書きたかったことは、『クラッシュ』よりもむしろこの『リバース』にあるのかもしれない。」、「前作『クラッシュ』は事故から生きていく覚悟を決めるまでの1年間を書いた。あのときも、随分とジタバタしていたが、『リバース』ではある意味、もっとジタバタともがきまくった。社会へ入っていくための準備段階、海鳥が飛び立つ前の助走区間のような時期だったからだと思う」と書いているが、アマゾンの流れの中を漂っていた3年間のそれぞれの時期(そして遂に海に出たのだ!)の、我々には容易には想像し得ない苦悩・葛藤が赤裸々に綴られており、いずれ違わぬ心に迫る作品である。
2作まとめて読みたい。
(2016年7月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年7月18日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年5月14日

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