芸術と科学のあいだ

著者 :
  • 木楽舎 (2015年11月30日発売)
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分子生物学者にして、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』等の多数の科学エッセイの書き手、更に芸術への造詣も深くフェルメールに関する著書も持つ福岡伸一氏が、日経新聞の日曜版に連載(2014年2月~2015年6月)した72のコラムをまとめたもの。
本書で福岡ハカセは、絵画、建築物、インテリア、歴史的な発掘品などの “芸術”(昆虫や動植物の姿のようなものも含まれているが)を取り上げ、それらと“科学”のあいだに見出した不思議な共通性・関係性について、徒然に語っている。
日系人ミノル・ヤマサキによる、尖がった高層ビルだらけのマンハッタンの突端に全く同じ形の二つの無機質な直方体を並べた、今はなき「世界貿易センタービル」ほか、フランク・ロイド・ライト、イサム・ノグチ、中世フランドルのタペストリー「ユニコーン狩り」、ロゼッタストーン、レオナルド・ダ・ビンチの手稿、金印「漢委奴國王」、レーウェンフックの顕微鏡、フェルメール、サルバドール・ダリ、ブリューゲル「バベルの塔」、アンモナイト、葛飾北斎「男波・女波」、丹下健三「国連大学」、ヴィレンドルフのヴィーナス、伊藤若冲、ランドルト環、カバのウィリアム等の古今東西の“芸術”が取り上げられている。
そして福岡ハカセは、現代では、文系と理系あるいは芸術と科学を分けることが当たり前のように考えられているが、今から3~4百年前はそれらを分離する発想などなく、フェルメールもガリレオもレーウェンフックもスピノザもニュートンもライプニッツも、世界の在り方・在り様を捉え、書き留めたいと望み、其々が其々の方法でそれを成し遂げたのであり、その根本にあるものは、現代でも通用する「この世界の繊細さとその均衡の妙に驚くこと、そしてそこにうつくしさを感じるセンスである」と語っている。
凝り固まった世界の捉え方を解きほぐし、“Sense of wonder”を刺激してくれる、福岡ハカセにして書き得るコラム集である。
(2015年12月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年1月11日
読了日 : 2016年2月12日
本棚登録日 : 2016年1月11日

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