アカガミ

著者 :
  • 河出書房新社 (2016年4月9日発売)
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2030年の日本、若者達は生や性に対する興味を完全に無くしていた。
体だけは大人へと変化しているにも関わらず、恋愛感情を理解できない、という。
そんな若者達や日本の将来を憂い、国が作り出した制度「アカガミ」。
志願者をマッチングして一緒に住まわせ子供を産ませる、というもの。

読んでいると怖くなる。
何が怖いって、もしかしたらこんな制度を現代の日本の政府が近い将来、作り出す可能性を否定できないところ。
時代設定もそんなに遠くはない未来の日本。
未婚の若者が増加し出生率も低下している現状を見ると、こんな未来も侮れない。
超合理的な結婚システム。
けれど結婚制度を合理的にはできても、人の気持ちは合理的に操作できない。

「アカガミ」で知り合えた二人の行く末がとても気になる。
本物の家族となり自分達の力で真の幸せを掴み取ってほしい。

戦時中、赤紙を受け取った若者達はお国のために戦場で敵と戦わされた。
近未来の日本における「アカガミ」もまた少子高齢化に歯止めをかけるため、お国のために産めよ増やせよ、と若者達から自由を奪おうというのか。
いつの世も犠牲になるのは発言力のない年若き者達…皮肉なものだ。

「あなたのことを誰かが好きになれば、少なくとも、その誰かはあなたの顔を忘れないわ。万一、あなたが恋をして結婚して、子どもを産めば、その子どもは母親の顔を忘れないわ」
結婚とは家族をつくるとは、本来そういうものと信じたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 窪美澄
感想投稿日 : 2019年10月1日
読了日 : 2019年10月1日
本棚登録日 : 2019年9月29日

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