生きるために罪を犯すことと、それに対する因果応報の話。
主人公が幼い少年なので、成長につれ読者と一緒に貧しい漁村の恐るべきしきたりを知ってゆく。夜にわざわざ塩を焼く仕事があること、それが近くを通った船を誘って破船させ、積荷を奪うためのものであること。この漁村にはわざわざ縁起を担いで船の転覆を祈願する儀式(妊婦がお膳を足でひっくり返すというもの)まであった。
このあたり、どういう心持ちで読めばいいのか、多少困惑させられる。年単位の出稼ぎや身売りが少なくないほど貧しい村で、生きるためには仕方がないという気持ちと、船をうまく誘えずがっかりする村の様子に鼻白む気持ちと。これは暦とした村ぐるみの犯罪であるが、その善悪の価値観すらゆらぐ気がする。
そして、最後はこの生業が招いた恐ろしい災厄。主人公にとって悲劇的な結末となるが、遠からずそうなるべきだった、という妙な腑に落ち感がある。母親が終盤妙にいきいきとしていたのになぜか共感した。苦界を生きることからの解放、ということもあるのではないか。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年5月26日
- 読了日 : 2022年5月26日
- 本棚登録日 : 2022年5月26日
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