検死審問: インクエスト (創元推理文庫 M ワ 1-1)

  • 東京創元社 (2008年2月1日発売)
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本棚登録 : 147
感想 : 27

20世紀の始めまで、ニューヨークでは検死官という職があったそうです。現在の監察医が行う仕事で、特権を乱用し放題。好きなように証人を呼べるし、陪審員はいてもいなくてもOK、日当を増やすためにわざと公判を長引かせるということもできたそうで…。この作品の検死官、スローカム閣下もやりたい放題です。陪審員はファーストネームで呼び会うようなお友達。娘を書記に任命し、供述書を長くして収入を増やそうという腹積もり。たいして必要とも思えないような証人を次から次へと呼ぶし、どの程度仕事をする気があるのやら。
しかし話が進むにつれて、笑っていた読み手も徐々に話に引き込まれていきます。供述という形をとっているので、語り手によって人物や物事の見え方が変わってくるし。それにしてもおかしいな、というところも出てくるし。真相が明らかになる場面では、細かく張られていた伏線にびっくり。笑わせるためだけの検死官の設定かと思ったらとんでもない。大団円に導く一番のキモでした。
ミセス・ベネットの作品への感想や、彼女の探偵小説批判(名探偵を簡潔に表現する能力には長けてます、このお婆ちゃん)、さらにはこの探偵役はいつから真相に気づいていたんだろう、なんてことまで楽しい。後書き読んでやっと気がつきましたが「探偵術教えます」の著者だったんですね。そりゃ面白いわけだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2013年3月17日
読了日 : 2013年3月17日
本棚登録日 : 2013年3月17日

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