皆月 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2000年2月15日発売)
3.54
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本棚登録 : 631
感想 : 72
5

最高!何が最高って上手く説明ができないけれど、とにかく良い小説だった。
内容はそんなことあり得るか?ってくらい陳腐なのだが、人物描写が上手く、登場人物がイキイキしている。特にアキラ。最初は厄介な存在だなぁと思っていたのだが(その時点で物語に入り込み、主人公の視点になっていた)、途中からは、ヤクザでさえ手に余るアキラの凶暴さながらにも徳雄に心を許していく様や、実は物事をよく考えていて、突飛な行動の裏にある優しさとかがたまらなく良い。物語が終わりに近づくにつれ、アキラとはもう会えないのかと寂しくなったほどだ。
さて、物語は実直なおっさんである徳雄が『みんな、月でした。がまんの限界です。さようなら』という意味深なメモを残し蒸発してしまった妻を、妻の弟であるアキラとソープ嬢と一緒に探すという話なのだが、初めは、みんな月ってどういう意味だろう?と、その答えを知りたくて読み進めていたが、途中からはそんなことを忘れ、登場人物たちに入り込んでいた。
ラストも良く、素敵な小説を読んだなぁという実感だけが強く残った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年12月26日
読了日 : 2016年12月26日
本棚登録日 : 2016年10月29日

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コメント 2件

chie0305さんのコメント
2017/03/08

手近にあったので、まずはこちらを読んでみました。…ぶっ飛びました。妻の失踪についてもいろいろ予想していたのですが…。むしろ頭を空っぽにして娯楽小説のようにして読むほうが良いのかも?とにかくアキラが凄すぎる…。

chie0305さんのコメント
2017/03/08

そう…ですね。アキラに対してはアダルトチルドレン的要素を感じました。徳雄(とくに魅力もない40過ぎたただのオッサンという解釈をしたのですが、合ってますか?まあ、情に厚い、というか、そここそがアキラが彼に惹かれた理由なのだろうと思いますが)に対して実の姉以上に愛情を感じているように感じました。家庭環境に恵まれず、人格形成が不十分なまま大人になってしまったのかな、とか。でも、深読みしすぎても違うような気もするし…。面白い奴だな!と思う方が正しいのかな。

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