『素晴らしい!』の一言。
読み終えてしばらくは鳥肌が治まらなかった。なんで今まで読まなかったのだろうという後悔と、読んで良かったという満足感で満たされている。
私の中で柚月裕子さんと言えば『孤狼の血』で、好きな作家の一人だが、なぜか本書はなかなか手に取らずにいた。検察であったり弁護士であったり、なんとなく堅苦しい感じがしていたし、物語としてもそれほ魅力を感じなかったからだ。しかし、その考えは良い意味で見事に裏切られた。
ヤメ検である佐方の元に弁護の依頼がくる。佐方は元検事で、今は優秀な弁護士だ。佐方が請け負う仕事は、報酬や勝算は関係なく、事件が面白いかどうかで決める。その相手となるのが若き女検事、真生。彼女は父親を心神喪失者に刺殺され、罪は罪として裁かれなければならないという信念の元、検事をしている。
状況証拠、物的証拠は全て被告人が有罪であることを示している。佐方に勝算はあるのか。ここで、タイトルにもなっている『最後の証人』が重要な役割を担ってくる。
さて、この本筋と並行して、ある事件を通した被害者の父親の視点からの物語がある。被害者は高瀬卓。小学生だ。塾の帰り、信号無視をした飲酒運転の車に轢かれ死亡。目撃者は一緒に帰っていた友人のみ。本来は起訴されるべき犯人は不起訴処分となった。
この事件に不満を持った父親は警察に訴えに行くが、けんもほろろに追い返された。その犯人は公安委員長をしている人物だったのだ。警察や検事に事件を握りつぶされた夫婦は復讐を誓い・・・。
この過去に起こった交通事故と今回の裁判がどう結びついていくのか。
登場人物の心理描写もさることながら、物語の構成が素晴らしい。これが本当にデビュー2作目なのだろうか。過去の事件と現在の裁判を並行させながらも、最後まで誰が被告人であるか(途中でわかってしまったが)をわからせない仕掛けにも脱帽。
そして、最後に必ず読者は救われる。
- 感想投稿日 : 2018年9月21日
- 読了日 : 2018年9月21日
- 本棚登録日 : 2017年4月14日
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