「自分から伸ばした手で誰かを振り払うような身勝手さも存分に自覚しているのに、その手を伸ばさずにはいられない人々」の「寄るべなさ」に寄り添う物語。前文は、解説に書かれていたものであるが、本作品の概要そしてとてもしっくりくる。
私の感想はほとんど解説文が代弁してくれている。
解説文も含めて本作を読了し、なぜ私は窪美澄さんの描く作品にこんなにも惹きつけられるのか?という疑問の答えがようやく見えてきた気がする。
窪美澄さんの作品はどこか痛くて不完全で寄るべなくて影りを感じるが、そんな中にも何処かにぽっと光る仄かな灯りが感じ取れる。それはまるで、綺麗事やハッピーなだけではない現実世界を生きる自分に、「それでも大丈夫だよ」と寄り添ってもらっているような心強さがや安心感のようなものを感じられるのである。
目を背けたくなるような人間の欠落を敢えて描く。それを敢えて読む。そこが大事なことな気がする。
それぞれの人物視点から七篇により構成されている長編だが、私はその中でも特に宮澤の視点で描かれている「柘榴のメルクマール」に自分が重なって見えた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年6月28日
- 読了日 : 2020年6月28日
- 本棚登録日 : 2020年6月28日
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