2013年に書かれた本で、米国はトランプ政権誕生前のため、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を巡る各国の温度差も今とは異なる。本書では「食料安全保障」における、日本と米国の駆け引きを中心に米国の戦略とその背景や、主に21世紀からの政治の内幕を解説している。
「食料安全保障」の定義が日本と海外(特に米国)とで異なっていることが本書で度々言及されている。日本では食料自給率が強調されるのに対し、本来はフードテロや政治・経済、安定供給全般を広く指す言葉のようだ。かつて田中角栄氏が、石油同様に食料についても「アメリカの傘下」にならないよう活動していたことにも触れられている。
大雑把にいえば、石油も食料もほぼ同じ構造だ。人間の生活に欠かせないものを大手資本が握り、それが政治力となって外交を動かす。調達力のある国の傘下に入ることは、その大国の支配下に入るようなものであり、いざという時に自国の立場を守れるのかどうか。
ただ石油と違って農業、畜産業はある程度自力で伸ばすことはできる分野であり、世界的な食料調達難の昨今、自国の産業構造を長期的な観点で見直すべき所に来ているのではと思えてくる。
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- 感想投稿日 : 2022年6月12日
- 読了日 : 2022年6月12日
- 本棚登録日 : 2022年6月12日
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