25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)

著者 :
  • 講談社 (2011年9月23日発売)
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本棚登録 : 4492
感想 : 362
5

まだアフターヌーンを買っていた頃、
四季大賞になった「虫と歌」が面白くて覚えていました。

よもやこんなに人気になっているとは露知らず。

表題の短編がべらぼうに面白い。
間のとり方が絶妙です。

コマ割りの時間分節も上手いですが、
特にすごいと思ったのは、
登場人物の気持ちとセリフの間。

前編の最後のコマの
「もっと調べなさい」というセリフは、
繊細なタッチと相俟って、
心情が匂い立つような表現で素晴らしいです。

こういう言葉と心の距離感は、
女性作家のほうが断然上手いんですよね。

あとわたしなりの解釈ですが、
この短編のタイトルの「25時」というのは、
「未来の生命」を表しているのだと思います。

宇宙や地球の歴史を24時間で表すみたいなのありますよね。
人類の誕生は23時59分50何秒とか。
そういう文脈で「25時」に「未来」という意味を乗っけているのかなと。

一冊通しての印象は、
一貫してフラジャイルな(壊れやすい)関係やモノ・人を描いている人だということ。

特に、
壊れていくあるいは溶けていくグロテスクな身体に、
異常なまでのエロティシズムを感じさせる描写は、
手塚治虫的な感性を感じます。

たぶんそういうのにエロスを感じる人なんでしょうね。

本棚から引っ張りだして読んだ、
四季大賞の「虫と歌」も同じテーマでしたから。
気持ち悪いという人が多い気のする作家ですな。
でも、かなりおすすめ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2012年7月11日
読了日 : 2012年5月5日
本棚登録日 : 2012年5月5日

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