まだアフターヌーンを買っていた頃、
四季大賞になった「虫と歌」が面白くて覚えていました。
よもやこんなに人気になっているとは露知らず。
表題の短編がべらぼうに面白い。
間のとり方が絶妙です。
コマ割りの時間分節も上手いですが、
特にすごいと思ったのは、
登場人物の気持ちとセリフの間。
前編の最後のコマの
「もっと調べなさい」というセリフは、
繊細なタッチと相俟って、
心情が匂い立つような表現で素晴らしいです。
こういう言葉と心の距離感は、
女性作家のほうが断然上手いんですよね。
あとわたしなりの解釈ですが、
この短編のタイトルの「25時」というのは、
「未来の生命」を表しているのだと思います。
宇宙や地球の歴史を24時間で表すみたいなのありますよね。
人類の誕生は23時59分50何秒とか。
そういう文脈で「25時」に「未来」という意味を乗っけているのかなと。
一冊通しての印象は、
一貫してフラジャイルな(壊れやすい)関係やモノ・人を描いている人だということ。
特に、
壊れていくあるいは溶けていくグロテスクな身体に、
異常なまでのエロティシズムを感じさせる描写は、
手塚治虫的な感性を感じます。
たぶんそういうのにエロスを感じる人なんでしょうね。
本棚から引っ張りだして読んだ、
四季大賞の「虫と歌」も同じテーマでしたから。
気持ち悪いという人が多い気のする作家ですな。
でも、かなりおすすめ。
- 感想投稿日 : 2012年7月11日
- 読了日 : 2012年5月5日
- 本棚登録日 : 2012年5月5日
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