ミラーニューロンの発見: 「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice 2)

  • 早川書房 (2009年5月1日発売)
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感想 : 34
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ものまね細胞が「共感」の土台としてあるというのは、
ラカンの鏡像段階を裏付ける結構有力なものなんだろうな。
この間読んだ山田風太郎の短編に共感覚者の話があったけれど、
それはミラーニューロンの変質がもたらすものらしい。

「赤ん坊は模倣によって学習をする」という話は非常に得心のいく。
なぜなら、
「まねる」と「まなぶ」の語源が共に「まねぶ」だということからもわかるけれど、
昔から言われてきたことであるし、
「模倣する」ことが「学び」を最大化させるという持論を持っていたからでもある。
ミームとミラーニューロンとの関連も興味深い。
模倣し合うと仲良くなりやすい、というのも実体験からわかる。
なんだかものすごいエビデンスだなぁ、このミラーニューロンというやつは。

また、
メディアがミラーリングシステムに与える影響という、
ミラーニューロンは他人に共感できるという良い面もあるが、
反面、暴力表現に誘発される無意識的な模倣暴力を生みだしているかもしれないという話は、
今までの「言論の自由」あるいは「表現の自由」論者の、
「人は自主的な意思決定者である」という予断が、
ミラーリングシステムという制御不能な生物学的自動性の発見により、
喝破される可能性を示唆している。
「非実在青少年問題」にも絡んでくる問題だな。
大きなところで言うとサルトル的な「実存」もヴァシレイト(使いたいだけ)してくるよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2012年2月16日
読了日 : 2012年1月22日
本棚登録日 : 2012年1月22日

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