東京難民

著者 :
  • 光文社 (2011年5月19日発売)
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感想 : 86
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金のねえ奴は、野たれ死ね。それがこの街の掟だ。―私立大学の3年生、時枝修はある日、学費の未払いを理由に大学を除籍される。
同時に両親からの仕送りが途絶え、実家との連絡もつかなくなった。
なにが起きたのかわからぬまま、修はやむなく自活をはじめるが…
夢をかなえるはずの大都会には、底なしの貧困と孤独の荒野が広がっていた。
平凡な大学生の転落と放浪を通じて、格差社会の傷口をえぐる青春巨篇。
ワーキングプアやホームレス問題を語ると自己責任という言葉がつきまとうが、この小説の主人公が体験した貧困スパイラルは人事ではない。
大学を親が支払っていた学費の未納が原因で除籍になってから、なんとか這い上がるためにポスティングや治験やホストの仕事でまとまった金を一時的に掴むものの、人間関係のトラブルや無実の罪や誘惑に対する甘さや損得勘定で割り切れない性格ゆえに、貧困スパイラルからなかなか抜け出せない。
そんな主人公の姿から浮かび上がってくるのは、弱肉強食や搾取の構造が根深く残る現代日本の荒廃である。
そんな日本を変えるには何が必要なのか、読み終わった後に友人や家族と話し合いたくなる社会派小説の傑作です。
中村蒼主演の映画版では後半部分が映画版ならではのオリジナルの展開になっていますが、より生きるためには金も必須だが、人を生かすのは縁と絆であることを強調するアレンジになっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月16日
読了日 : 2024年3月16日
本棚登録日 : 2023年1月13日

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