マグノリア [DVD]

監督 : ポール・トーマス・アンダーソン 
出演 : ジェレミー・ブラックマン  トム・クルーズ  メリンダ・ディロン 
  • ポニーキャニオン
3.51
  • (50)
  • (63)
  • (99)
  • (16)
  • (12)
本棚登録 : 457
感想 : 74
5

L.A.郊外のサンフェルナンド・ヴァレー。曇り空のある日。
人気長寿クイズ番組『チビっ子と勝負』を介して、お互いに知らないままつながりを持つ男女の人生模様が映し出される。
制作者で死の床にあるアール・パートリッジ(ジェイソン・ロバーズ)の若い後妻リンダ(ジュリアン・ムーア)は悲嘆のあまり混乱の極み。
アールは献身的な看護人のフィル(フィリップ・シーモア・ホフマン)に、彼がかつて捨てた息子を探してほしいと頼む。
彼の息子は今ではフランク・T・J・マッキー(トム・クルーズ)と名乗り、女性の口説き方をモテない男に伝授する指南役として評判をとっていた。
いっぽう、番組の名司会者ジミー・ゲイター(フィリップ・ベイカー・ホール)もガンを宣告されて死期を悟り、彼を憎んで家出した娘クローディア(メローラ・ウォルターズ)の元を訪ねるがすげなく追い返される。
薬物に頼って生きる日々の彼女の前には、生真面目な独身警官ジム(ジョン・C・ライリー)が現れた。
日暮れと共に雨が降り出す。番組が始まるが、目下天才少年として評判をとるスタンリー(ジェレミー・ブラックマン)は本番前にトイレに行けずおしっこを我慢していたが、ついに漏らしてしまって無言になる。司会していたゲイターも倒れた。同じ頃、その昔番組でスタンリーのように天才少年とうたわれたドニー(ウィリアム・H・メイシー)はなじみのバーへ。
そこのバーテンをひそかに恋する彼は、年甲斐もなく歯列矯正ブレスをはめる予定だったが、勤め先の電気店でクビを言い渡されていた。こうして彼らの運命は変転を迎えようとしていた。
クローディアはジムとレストランでデートするが、キスを交わした後で逃げ去る。
スタンリーは「僕は人形じゃない」と日頃の鬱積を生放送中にぶちまけた。
フィルに呼び出されたフランクは、かつて母と共に自分を捨てた父親アールの枕元で激情のあまり嗚咽する。
動揺しきったリンダは、車の中でアールの薬を服んで自殺を図る。
バーでついにバーテンに求愛したドニーは、歯の治療の金を盗むべく電気店へ押し入る。
それを目撃したのが車で通りかかったジム。ところがここで思いもよらぬ天変地異が……。
かくして、その事件のあまりの不可思議さが、思い悩む彼らの心にあまねく影響を及ぼし、ひとりひとりに“救済”をもたらすのであった。
冒頭に語られる3つの奇妙な偶然が重なった奇妙な事件そしてこの映画で描かれている多彩な人が交錯し偶然が重なった奇妙な出来事を通してポール・トーマス・アンダーソン監督が語ろうとしたのは、「過去を捨てたと思っても過去は追ってくる」「人生は様々な偶然が重なったもので、奇妙な出来事も幸せな出来事も不幸せな出来事も起きる。なら目の前で起きる出来事に向き合いどのような道に進むかは、自分次第」というメッセージを、親子や夫婦関係の葛藤を軸に描かれている。
ほろ苦いユーモアや恋や夫婦や親子関係が交錯していてあらゆる人が共感し易いし、映画の後半でキャラクターが輪唱する「ワイズ・アップ」などのエイミー・マンの楽曲がキャラクターの心情を雄弁に描き、人の良い警察官ジムを演じるジョン・C・ライリーやガンで瀕死のアールを献身的に介護するフィルを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンなど演技派俳優が一般人を演じるナチュラルな演技やマッチョなセルフイメージを逆手に取ったトム・クルーズの演技が、印象的な傑作ヒューマン群像映画です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月10日
読了日 : 2023年1月10日
本棚登録日 : 2023年1月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする