ゲット・アウト [Blu-ray]

監督 : ジョーダン・ピール 
出演 : ダニエル・カルーヤ  アリソン・ウィリアムズ  ブラッドリー・ウィットフォード  ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ  キャサリン・キーナー 
  • NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
3.66
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本棚登録 : 70
感想 : 10
4

ニューヨーク在住のアフリカ系アメリカ人写真家クリス(ダニエル・カルーヤ)は、ある週末に白人の彼女ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の招待で彼女の実家を訪れる。若干の不安とは裏腹に過剰なまでに歓待されるが、黒人の使用人がいることに違和感を覚える。その夜、庭を猛スピードで走り去る管理人と、窓ガラスに映る自分の姿をじっと見つめる家政婦を目撃し、クリスは動揺する。翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティが開かれるが、集まった多くの友人が白人ばかりで、クリスは気が滅入る。そんななか、どこか古風な黒人の若者を発見したクリスは、思わず携帯で撮影する。しかしフラッシュが焚かれた瞬間、彼は鼻から血を流しながら急に豹変し、「出ていけ!」と襲い掛かってくる。クリスはローズと一緒に実家から出ようとするが、クリスには創造を絶する恐怖が待ち構えていた。
異人種間差別や人種ネタが多いケイ&ピールというコメディアンのコンビの片割れジョーダン・ピールが、初監督脚本でのホラーコメディ映画。
まず異人種間カップルの映画「招かざる客」をなぞったような黒人カメラマンのクリスが白人の彼女ローズの実家に挨拶に行くという始まり方が、絶妙。
クリスは、ローズに「黒人である自分が白人の家族に受け入れられるだろうか?」という不安を口にするが、ローズは「大丈夫よ、父はオバマ支持派だしレイシストじゃないから」とクリスを安心させようとする。ローズの実家に向かう途中の道で誤って鹿を牽き殺してしまった現場で同乗者に過ぎないクリスに運転免許証の提示という不当な要求をする警察官が現れたり、クリスの友人ロッドからは「白人の彼女の家には行くな」と忠告されたり、クリスは不安でいっぱい。
ローズの父はクリスにベルリンオリンピックで金メダルを取った黒人選手の写真を見せて誇りに思うと語るなどリベラルな思想なのに、黒人の庭師やメイドがいたり、ローズの弟はクリスが黒人であることをいじってきたり、クリスと同じ目線の観客は安心と不安が入り交じった居心地の悪い違和感を感じることになる。
そしてクリスは、ローズの実家の庭師とメイドの不自然な言動やパーティーに参加していた黒人が黒人特有な挨拶であるお互いの拳を軽くぶつけ合うことをしなかったことに決定的な違和感を感じたクリスはローズとローズの実家を出ようとした時、ローズの実家が抱えている身も凍るような秘密が明らかになる。
ローズの実家アーミテッジ一家がやろうとしていることは、多民族国家アメリカに拭い難く残る異人種間差別や偏見、そして白人が占有している政治経済などの重要な役割を異人種に譲りたくない、ただ異人種の特有な能力を利用するだけという薄汚れた本音をホラーの形で風刺したもの。
クリスの唯一の味方に思えたローズの素顔にも、ゾッとさせられる。
クリスの友人ロッドが妄想するような「黒人を洗脳か催眠術にかけて奴隷にする」なんていうチャチなものでは断じてない、恐ろしいものの片鱗を感じた。
それは、「黒人だからバスケとか運動得意でしょう?」とか「韓国人だから辛いもの好きでしょう?」など、浅い文化知識から来る安易なイメージが、異人種の偏見に繋がる怖さに通じる。
白人のヒスパニック系移民に対する恐怖をベースにトランプが大統領になったアメリカでこそ、作られた「黒人がアメリカで生きることの恐怖」についての傑作サスペンスホラー映画。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月6日
読了日 : 2023年1月6日
本棚登録日 : 2022年12月28日

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