巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2002年12月1日発売)
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世界にまたがるアメリカの超巨大企業が潰れかけている。その企業を変革し、救ったのは門外漢の男。巨大企業のあるべき姿、マネジメントの方法

●感想
 倒れかけていた巨大企業、IBMを門外漢の社長が復活させた話。改革のために取り組んだ多くのことが語れ、そのどれもが至極真っ当である。大復活のための魔法、裏技などない。愚直に今の現場を改善し続け、社員に声をかけ続け、組織を変えることでしか、企業は変革できないのである。
 巨大企業に勤める管理職員は必読の本と言ってよい。ルイスが入る前のIBMは恰好の反面教師になる。従業員にとっては居心地が良いばかりで、顧客へのサービスは悪くなるばかりであった。一方、ルイスが入った後で目指した企業像は「市場に目を向け、顧客の声を聴き、より良いサービス創造にまい進する」である。書いてみると当たり前の姿だが、この姿勢を維持し続けるのが難しいのだ。一度大きな成功を掴んでしまうと、どうしても内向き志向になる。自浄作用を働かせられないなら、ルイスのような変革屋を外部から招聘するのも手かもしれない。


●本書を読みながら気になった記述・コト
*ルイスはIT業界は未経験だった。ただ、IBMを復活させた
・経営、ビジネスには原則があって、それには業界経験が関係なかったのだろう
・IBMはもともとIT企業として高い付加価値を発揮するポテンシャルがあったのだろが、内向きすぎた
・それを、ルイスがひっくり返し、サービス企業としてあるべき姿に転換させた
・KDDIやJALの経営に携わり、成功に導いた稲森氏を思い起こさせる

*IBMは「顧客」ではなく「社内」に目を向けていた
・IBMの多くの社員が顧客ではなく、社内の争いや昇進にばかりに気を取られていた
・それでは、多くの顧客を競合企業にさらわれるのは当然ともいえる
→何よりも「顧客の声」に耳を傾けるよう、指導した
 →「内輪争いばかりしている」企業としてまっさきに浮かぶのはドラマ「半沢直樹」の所属する銀行だろう。彼らのように、足の引っ張り合いをしているような企業が、高い付加価値を発揮してサービスを作ることは創造できない

*当たり前のことを熱く語ることがいかに大切か
・本書の中でも「意識の中心を社内から顧客に変えよう」ということを、何度もルイスは唱えている。これは、巨大企業において、「当たり前に持っておいてほしいマインドセット」を全従業員に浸透させるかが、いかに難しいかを表している
・リーダーはこれでもか、というくらい、従業員、社員のあるべき姿を語らねばならないのだろう

*ITの潮流が「ラップトップPC提供」から「ソリューションビジネス」になることを見抜いていた
・IBMは「サービス」によって躍進を遂げたが、それまでサービス部門は日陰部門、製品部門の二の次と見なされていた
・多くの企業オフィスにコンピュータが導入される未来を捉え、ソリューションビジネスの躍進をルイスは予想していた

*メールによって数万人の社員をマネジメントする
・ルイスはメールによって何度も自分の想い、メッセージを伝えている。付録として「メール文面」があるのには驚いた
・「なぜこれをやっているのか」「なぜ取り組まなければならないのか」を情熱をもって語れる経営者はやはり強い。社員の観る方向をまとめられる。「社員への発信力」は社長の重要スキルであり、ルイスはメールを使って深いコミュニケーションを取っていた
・メールについての長文が何度もあった

*IBMは新技術を開発するのに、商品化の時点で負けてばかりであった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月22日
読了日 : 2020年8月22日
本棚登録日 : 2020年6月28日

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