十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (1996年4月18日発売)
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阪神大震災の後、人の強い感情を読み取ることができる「エンパス」の力を持つ賀茂由香里は、その能力を活かして被災者の心のケアをしていた。

由香里が被災者の苦しみを見抜く抜群の共感能力をもっているという噂は、ボランティアの間で広まり、そのことがきっかけで長期入院中の女子高生、森谷千尋を見てほしいと頼まれる。

そして由香里は、千尋の中に十三人もの人格が同居していることを知る。十三の人格はそれぞれの性格に関係した名前がついており、それらは千尋が経験した辛い過去から彼女を守るために生まれたようだったが、震災後に生まれた磯良という人格だけは明らかに異質で、激しい殺意のようなものを感じた。

それ以降磯良は表に現れず、由香里は千尋の通っている学校の臨床心理士である野村浩子と協力して、千尋のカウンセリング(人格の統一化)を進める。他の人格たちも協力的で、カウンセリングは順調に進んでいるように思えたが、千尋を苦しめていた父親や学校の教師や生徒たちが続けて謎の死を遂げる。

由香里は磯良の謎を解くため、精神薬理学の研究をしている大学助教授の真部和彦と出会い、磯良の正体を知ることになるが…





ホラーというよりは超能力対決感が強かったため、あまり怖い感じはなかったように思う。

読んでいて磯良の謎だけでなく、エンパシーの能力者と多重人格者という癖のあるキャラクターを通して、人の心についても考えさせられた。

多重人格者と話す場合は、別の人間と話していると思って接すればイケると思うが、エンパスの人だと心を読まれていると意識してしまい、雑念を抑えられる気がしないと思った。

どういう結末になるのか、終始楽しみながら読み進めることができた。良い作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月18日
読了日 : 2020年8月18日
本棚登録日 : 2020年8月18日

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