知識人とは何か (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社 (1998年3月11日発売)
3.68
  • (71)
  • (67)
  • (137)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1221
感想 : 79
4

まずこの本を入手したきっかけを書いておく。「『教養』研究」のレビュー論文である綾井(2015)において、サイードの別の著書から2か所引用されており、当該分野の基礎的な研究を行った人文学者として扱われていたことにあった。ただその本より先に代表作である本書を読むことにした。表題のとおり、知識人とその「表象」活動に着眼した文献研究であるが、講演録がベースになっており比較的読みやすい。知識人の在り様を探るというより、学問論の視点を持ちながらページをめくってみた。

サイードが先達の知見を踏まえて考えた知識人とは、「亡命者にして周辺的存在であり、またアマチュアであり、さらには権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手」(p.20)であり、以下のような人々と異なる立場にある。具体例としては、インサイダー、エキスパート(専門性を持った人)、ジャーナリスト、通人、プロフェッショナル(専門家)、コンサルタント、シンク・タンク、いわゆる権威筋に属する人たちが挙げられる。

読み終えて得られたことは、アマチュアとしての研究の取り組み姿勢の具体的なイメージと、これから進めようとしているプロジェクト推進のためのいくつかの参照枠―知識人と大衆論、ニヒリズム、他者のアイデンティティや文化を排除する「側(サイド)の発想」(p.218:姜尚中による解説)―だった。またオルテガが『大衆の反逆』で専門主義の野蛮性を説いていることを思い出した。


引用文献
綾井 桜子2015『教養』研究の現状と課題—学校化された教養を問うために 「教育学研究 」82(1) 日本教育学会

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 高等教育
感想投稿日 : 2016年11月12日
読了日 : 2016年11月12日
本棚登録日 : 2016年11月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする