予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房 (2013年8月23日発売)
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行動経済学者が明かす、人間の行為はどれだけ合理的ではないか。

人気の本だけに、さすがに面白かった。

「はじめに」に筆者が記す以下がこの本のテーマ
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この本は、人間の不合理性、つまり、わたしたちがどれほど完璧とははど遠いのかについて描いている。
(中略)
わたしたちは不合理なだけではなく、「予想どおりに不合理」だ。つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。
(中略)
わたしたちの不合理はでたらめでも無分別でもない。規則性があって、何度も繰り返してしまうため、予想もできる。
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■1章 相対性の真相
相対性はわかりやすい。

相対性の比較の選択の際、選んでほしい商品より少し劣った方向性が同じおとりを選択肢に含めることで選んでほしい商品が選ばれる。

「相対性は身のまわりのどこにでもあり、わたしたちはあらゆるものごとを相対性の色メガネで-バラ色だろうがなんだろが-見ていると自覚することだ」

■2章 需要と供給の誤謬
私たちは最初に示された値段にアンカリングされてしまう。

他人がとった行動によって善し悪しを判断することを「ハーディング」という。
自分の過去の経験によって判断することを「自己ハーディング」という。

スターバックスは、ダンキンドーナツのように低価格にアンカリングされなかったのは、入店の経験がほかとはちがったものになるように、高級感を演出するためにできることをすべてやった。

同じ経験でも恣意的にとらえ方を左右することができた。筆者が朗読に対して聴衆にお金を払うか、お金をもらえるかそれぞれ前提を変えて質問すると、払うか聞かれた側は払うように、もらえると言われた方はもらうように考え出す。

「消費者が支払ってもいいと考える金額は簡単に操作されてしまう。」
「ふつうの経済学の枠組みでは、供給と需要の力が互いに独立していると仮定するが、アンカリングの操作は、実際にはふたつが互いに依存していることを示している。」

■3章 ゼロコストのコスト
無料の魅力。
自分のほんとうに求めているものではなくても、無料になると不合理にも飛びつきたくなる。それは人間が失うことを本質的に恐れるからではないか。

■4章 社会規範のコスト
社会規範と市場規範のバランス。

プレゼントは社会規範として機能する。経済効果(市場規範)としては効率が悪いものの、社会の潤滑油として機能する。
市場規範で考えるなら、プレゼントをあげるより、現金を上げた方がよい。

「企業が社会規範で考えはじめれば、社会規範が忠誠心を育てることに気づくだろう。さらに重要なことに、社会規範は人々を奮起させる」
「人は給料の為に働くが、そのほかにも仕事から無形の利益を得ている。」

■5章 無料のクッキーの力
クッキーを無料で提供すると、皆、社会規範の重要さを念頭において、1つか2つクッキーをもらうが、有料にした途端、たくさん買う。
お金を求めることで市場規範を持ち込み、無料のくっき0の時に作用していた作用していた社会規範を追い出してしまった。
もう一つの実験では金銭をかかわらせず、労力でクッキーをもらるようにしたが、無料と有料の間だった。
労力を伴う取引が金銭的取引に比べて社会規範を維持できるのだから、どうすれば人々がサービスに対してお金を払う代わりに、自分たちの労力をもっと投資するようになるかを考えるべきだろう。

■8章 高価な所有意識

自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、、人の基本的な偏向であり、自分自身に関係のあるものすべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、もっと全般的な成功を反映している。

■9章 扉をあけておく

選択の自由の何がこれほどむずかしいのだろう。たとえ大きな犠牲を払ってでも、できるだけ多くの選択の扉をあけておかなければならない気がするのはなぜだろう。

■10章 予測の効果
知識が先か後かで経験が変わる。
予測とビールの味
あらかじめバルサミコ酢を入れたビールを飲んでもらう時に、バルサミコ酢が入っていると飲む前に教えるとおいしくないと思う。飲んだ後に教えるとそれほどおいしくないと思わない。

あるグループにステレオタイプを抱くと、こちらの反応が変わるだけではなく、ステレオタイプ化された人たちのほうも、押し付けられたレッテルに気付けば反応が変わる(心理学のことばで言うと、レッテルに「プライミング」される)

高級料理を汚い部屋で出してもおいしいと思えない。
クラッシックのプロの演奏家が朝の出勤時にストリート演奏してもほとんどの人が気付かない。

肝心なのは、芸術でも文学でも演劇でも建築でも料理でもワインでも、とにかくなんにつけても、それを経験し評価するうえで、期待がどんな役割を果たすのか、ほんとうのところはわかっていない。

11章 価格の力
プラセボ効果
値段が高い薬の方が効果がある

12章 不信の輪
「共有地の悲劇」はふたつの競合する人間の理解につきる。一方では、長期的な観点から、個人は共有資源の持続可能性を気にかけている。その個人を含むすべての人が共有資源から利益を得ているからだ。だが、同時に、短期的に見ると、個人は自分の公正な取り分以上とることで、すぐに利益を得る。

13章 私たちの品性について その1

世の中には2つの不正がある。
1つは、強盗を連想させるような不正。
もう一つは、自分が正直者だと思っている人たちが犯す不正だ。

あらかじめ十戒を読んでから実験をすると不正が減った。十戒で正直の概念を呼び起こせる。

14章 私たちの品性について その2
不正の機会が与えられたとき、得られるものが現金の場合より、代替貨幣の時の方が断然不正が増える。

15章 ビールと無料のランチ
独自性要求
独自性を表現することに関心のある人ほど、テーブルでまだだれも頼んでいないアルコール飲料を選んで、自分がほんとうに個性的だと示そうとする傾向が強い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月28日
読了日 : 2021年9月5日
本棚登録日 : 2021年5月16日

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