ブルージャスミン [DVD]

監督 : ウディ・アレン 
出演 : アレック・ボールドウィン  ケイト・ブランシェット:サリー・ホーキンス  ピーター・サースガード 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.47
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本棚登録 : 443
感想 : 79
5

ウッディアレンらしい会話劇であり、人間の業や哀れさを鋭く描きながら、面白おかしく表現した職人技のコメディー。この映画、舞台にしても面白いと思う。

現在と回想のシーンかなり細かく交互に描かれるのに観ていて混乱することがない。
しかも、今から回想ですよ?という思い出すようなシーンも全くなく、突然現在と過去がシーン切替で現れる。
普通はこんなシーン切替すると何が何だか分からなくなるもの。脚本と撮り方が絶妙なので、違和感がなく観れる。

タランティーノの「パルプフィクション」も現在、過去が入り乱れながらそれが面白さになっていたが、こちらも同様。過去が段々あらわになりつつ、現在の状況も進んでいく。スリル感がストーリーをぐいぐい引っ張る。

登場シーンも、ラストシーンも主人公のケイトブランシェットは独り言をしゃべるおかしな女なのだが、全然印象が違う。登場時は「全身ブランドづくしの変な女」なのだが、ラストはある意味、「私たちの」主人公であり、どこか自分を映し出してしまっている孤独な主人公に同情してしまっている。

自分に自信がなく、自分に何もないとうすうす気付きながらも、現実の自分に向き合えなく、理想の自分を信じてしまう。主人公は美しいが為に、安易に金持ち男と付き合うことでかりそめの夢をかなえてしまう。

誰もが自分が特別で何者かだと思いながら、日々の生活の中で、何でもない自分を感じ、ギャップに苦しむ。主人公のケイトブランシェットが、ただの嫌な女ではなく、なぜか親しみを持ち始めてしまうのはそんなところだろう。

主人公も、妹もなんと活き活き(?)としていることかアニメのキャラクター並みにはっきりとキャラが分けて描かれて、お互いを際立たせている。

この2人の演技、実在感のある女らしさが、どうしようもない男たちに囲まれながらも、きらきらと輝いている。ドン詰まりの彼女たちなのだが、哀愁に包まれながら輝いているように見える。

全く違う映画なのだが、チャップリン「街の灯」、溝口「西鶴一代女」のような、非常に厳しく悲しい現実なのだが、人間の底力を信じたくなるような、そんな映画だと思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年3月5日
読了日 : 2018年3月5日
本棚登録日 : 2018年3月4日

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コメント 2件

nejidonさんのコメント
2018/03/05

deroderohさん、こんにちは♪
丁寧なレビューを楽しく読ませていただきました。
ウディ・アレンが好きなのと、ケイト・ブランシェットのファンなのもあって、
少し前に見た映画です。
古い作品ですが「欲望という名の電車」を思い出しながら見ていましたが、
さすがのウディ・アレンですね。ちゃんとコミカルに仕上がっていました。
男女で意見が分かれそうな作品ですが、私はちょっとジャスミンが痛々しくて。
身近にいるたくさんタイプですし。もしかしたら自分自身かもしれないし。
映画のように俯瞰して人生を見られたら、そんなこともコメディになるんでしょうね。

「収容所から来た遺書」も楽しみにしております♪泣かないで下さいね=

deroderohさんのコメント
2018/03/06

nejidonさん コメントありがとうございます。
なるほど!確かにそうかもしれません。男だから、傷ついてボロボロのジャスミンを完全に自分に重ねることなく、異性として魅力的に感じられるのかもしれません。
ウッディアレンいくつになってもフレッシュな作品が作れるのが驚きです。監督は知力、体力相当必要だと思うのですが。日本でも新藤兼人さんが100歳になっても監督されてたので、この調子で100歳まで作品を生み出して欲しいです。
「欲望という名の電車」確かに物語が似ていますね。この映画も名作でした。心の底の恐ろしさというか。そしてマーロン・ブランドが若くかっこいい。(ゴッドファーザーのおじいちゃんがこんなかっこいいとは)
脚本のテネシーウィリアムスの自伝を読みかけて、そのままにしているのを思い出しました。最初の方の若い男性とのアバンチュールのところで挫折したまま、進まず。。。
「収容所から来た遺書」も頑張ります。

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