"The Murder of Roger Ackroyd" 創元推理文庫 / 大久保 康雄
古典ミステリ中「意外な犯人」で名を馳せた作品。
金持ちのロジャー・アクロイドが刺殺された。
ロジャーを取り巻く人間関係と、数々の謎。
ちょうどこの村に引っ越してきたエルキュール・ポワロは、依頼され解明に乗り出す。
犯人を知らないうちに早く読んでしまおうと思ったのだけど、正解だった。
事前に知ってたら全く面白くなくなる類の物語だと思う。
気になったのは、アリバイが分刻みで設定されているところ。
そんなに頻繁に時計見ないし、あれが日常の普通の動作なら、みんな時間を気にしすぎだ。
ちょっとしたことなんだけど、そのへんが私には不自然に思える。
あと、その緻密なアリバイのこともあってか、何時「何分前」にどうの……という回りくどい記述が多かった。メモを促しているのだろうか?
この手の作品にはアフリカやらインドやら、ヨーロッパから見た異国情緒を取り入れることが多い。
今回はチュニジアの短剣が出てきたし、他の作品でもインドの奇術に使う箱(『クィン氏の事件簿』)、バグダッドの大櫃(『マン島の黄金』)など、重要なトリックそのものだったりする。
そういえば『泥棒は図書室で推理する』では、アマゾンかどこかのソードフィッシュが凶器として使われた作品もある、と言っていた。
異国の文化というのは、どこかミステリアスで、しかも読者からは思いがけないトリックや仕掛けが使えるため、都合がいいのだろう。
歯のことは歯医者に、家のことは執事に、体のことは医者に、つまり質問するならその物事の専門家に聞け、とポワロは言っている(P108)。
こういうのをことわざで何て言うんだっけ?もちは餅屋に?
P152の後ろから2行目に「前夜と同じように」とあるが、前夜のことをシェパードは知っていたんだろうか。
きちんと検証してないけれど、あの一文はおかしい気がする。
ポワロはフランス人なので、たまに英語のスペルを間違えるらしく、日本語訳ではわざと漢字を間違えて書いた単語がいくつかあった。
最終章のシェパードの独白は渋くて好きだ。
- 感想投稿日 : 2012年11月22日
- 読了日 : 2003年8月17日
- 本棚登録日 : 2012年11月22日
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