日本が太平洋戦争へと踏み込んで行った経緯がよくわかる。決して一枚岩で戦争に突き進んだのではなく、天皇、首相、外務省、様々な立場が時に平和主義者として振る舞い、ある行動が戦争を促進に繋がったり。軍部の暴走に牽引された、大きなうねりにとなって戦争に陥入って行った歴史が紡がれる。
その、大きなうねりの中で、翻弄されながらも個人として、平和への志を失わずに、働き続け、死んで行った広田弘毅という人物の人生が静謐な筆致で描かれる。物来順応、自ら計らわぬ生きかた。決して真似することができないし、何故、他者にあれだけ邪魔をされても、自らの命を賭けてまでも、戦犯という汚名を着せられても、その様に在ることができたのか。全く理解ができないが、責任を果たすということ、意志を強く持つ人の姿にこの書を通じて触れることができたことは、自身の駄弱さを痛感し自らの来し方を省みる上で、僥倖なのかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代 歴史小説
- 感想投稿日 : 2020年5月12日
- 読了日 : 2020年5月12日
- 本棚登録日 : 2017年12月29日
みんなの感想をみる