力のある物語ではなく、するするっと身のうちに入り込むような小説です。
力強さはないのに、脳内に情景が絶えず流れてきます。
全編とおして知らない街を歩く心細さとかすかな高揚に満ちていました。
淡々と日々を過ごす栞と、つかみどころのない元同級生・耕也。
客観的にみると耕也がけっこう悪い男です。これ社会人とかだったらただゲスいと思うのですが、高校生だから淡い切なさになっています。
耕也が本能として惹かれる相手は亜子なんでしょうけど、理性として惹かれる相手は栞なんだと思います。
今作は栞と耕也のその理性のやりとりが心地よく、東京の街と相まって独特な雰囲気となっていました。
いくらでもすれ違い、一生道が交わらないでも日々を過ごせる大都会東京の中で、2人の道が遠ざかったり近づいて行ったりする様がもどかしく切なく、最後は淡い感動がありました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年9月4日
- 読了日 : 2021年9月4日
- 本棚登録日 : 2021年9月4日
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