オッサンの壁 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2022年4月13日発売)
3.37
  • (10)
  • (18)
  • (23)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 288
感想 : 39
4

運良く、参議院選挙のタイミングで図書館の予約が取れ、読むことが出来た。

毎日新聞で政治部長を勤めた筆者が、男性優位の社会で揉まれた経験を赤裸々に描いている。新聞記事の如く、感情を排した淡々とした文体で書かれており、読者を不快にさせる箇所は全く無い。しかし、筆者の職業人生に思いを馳せると、日本の将来に対する、彼女の強い情熱を感じた。

「生まれながらの下駄」を履いた、古い体質の組織に生きるオッサンには是非読んで頂きたい。

書いてある内容は至極納得のいくものだ。
そして、残念ではあるが、自分自身が「オッサン予備軍」であることを自覚した。
例えば、自分の部下に、2人の育児をする女性総合職社員がいた時は、毎日振り回され仕事が進まず、自分は毎日のように不満を抱いていた。
また、育児から復帰した女性社員がスピード昇進すると、心の中で「なんであんなに経験不足なのに」と呟いたものだ。

こんな負の感情を持つ時点でアウトなのだろう。私の不満は、男性社会目線だったということだ。

確かに、女性活用を一部の人だけに任せるのではなく、組織全体・社会全体でフォローするような体制や雰囲気作りは大事なことだ。しかし、その言葉だけで片付けるのは綺麗事であり、問題を先送りにする理由にすぎず、実現は難しい。
強制的にでも、オッサンから女性に下駄を履き替えさせて、女性を今の実力以上に背伸びしたポストへ任命していかなければ、これだけ出遅れ感のある日本企業や政界の活性化は不可能だろう。

そして今後は、「出世目指して無茶な働き方を続けてきた自分ではなく、業務経験値の少ない年下の女性が昇進し、自分は部下として全力でサポートする。」ということが起こりうる。オッサン社会で下駄を履いてきた人は、この変化をどこかのタイミングで受け入れることになる。もう後回しにはできない。果たして、自分は受け入れることができるか!?

「オッサンの壁は、乗り越えるものではなく壊すもの」と締めくくられている。それを壊すのは女性だけではない、と補足させていただきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月11日
読了日 : 2022年7月11日
本棚登録日 : 2022年7月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする