政と源

著者 :
  • 集英社 (2013年8月26日発売)
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荒川と隅田川に挟まれ三角州のようになった墨田区Y町
江戸時代には大小の運河が町中に張り巡らされ、小船で水路を行き来したという

その風習も今は観光客向けの貸しボート屋か、川沿いの問屋に商品を卸す職人ぐらいになってしまったらしいが、この小説の二人の主人公のうちの一人、堀源二郎がつまみ簪職人のため、物語の折々に小船での移動風景が描かれており、とても興味深かった

さらに、源二郎のつまみ簪作りの仕事風景にも魅せられた
ネットでつまみ簪の画像を検索もした
至る所に、江戸情緒があふれていた

まるで正反対の幼馴染コンビ、源二郎と国政、合わせて146歳の老人コンビ
戦争体験や愛する伴侶との出会いと別離、家族のために必死で働いてきたことなど、様々な思い出を経て現在に至るのだが、二人の現在の生活の満足度には大きな隔たりがあるようだ

それは、破天荒な源と四角四面で融通が利かない政という二人の性格の違いによるものなのか

わが夫を見ても、この年代の男性は不器用で自分の気持ちを素直に表現することが苦手、政のような性格がほとんどではないか
妻や娘から総スカンを食らう政があまりに気の毒で哀れにさえ思えた 

口は悪いが、小気味良い二人の会話は愉快だ
年をとっても、こんなに言いたいことが言い合えて、自分のことを分かってくれている友人がいるということは何と素晴らしいことか、ただただ羨ましい

一つ気になったのは少女漫画のような挿絵
東京の下町風情が漂ういい雰囲気なのに、あの挿絵でぶち壊し、興ざめしてしまった 読者に想像の自由を与えてほしい 





読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月26日
読了日 : 2021年8月26日
本棚登録日 : 2021年8月23日

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