怒り(下)

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  • 中央公論新社 (2014年1月24日発売)
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犯人山神一也は、整形し、逃亡を続けている
捜査は難航し、2回目の公開捜査番組が放映され、整形した犯人の顔写真が公開されたことにより、房総の田辺、東京の直人、沖縄の田中、それぞれの周辺でも、人々の心に陰が生まれ、微妙な波風が立ち始める

愛子にとっての田辺、優馬にとっての直人、それぞれがなくてはならない存在になりつつある
しかし、一方で彼らの過去を信じきれない自分もいる
自問自答を繰り返す
信じられるか、信じられないか。それはとても主観的なもの
自分に相手を信じる自信があるかないか。要するに、自分に自信があるか、ないか

読んでいるこちらまで胸が苦しくなった

意外な形で結末を迎え、犯人は亡くなってしまったことで
殺人現場の「怒」の意味するところは、結局明かされないままなのが、消化不良みたいでスッキリしなかった
各人の揺れ動く心理描写がよかっただけに、残念だ

北見刑事の愛した美佳の過去も明らかにならなかったが、美佳の過去が明らかになることが重要なのではなく、ここでもまた、どんな過去があるにせよ美佳を信じきれるかどうかが重要だったのだろう

タイトルの「怒り」は、愛するものを信じきれなかった自分への
怒りなのかもしれない








読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年11月21日
読了日 : 2019年11月21日
本棚登録日 : 2019年11月20日

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