怒り(下)

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著者 : 吉田修一
  • 中央公論新社 (2014年1月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045875

怒り(下)の感想・レビュー・書評

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  • 寝食忘れてというのはいささか大げさだが、睡眠時間を削って上下巻一気に読み切った。
    続きが気になって気になって。
    でも、これはないよ。こんな終わり方って・・・。
    あんまりですよ、吉田さん。

    世田谷の住宅街で起きた夫婦殺害事件。
    現場には血で描かれた“怒”の文字。
    犯人はそのまま逃走し、1年が過ぎた。
    並行して3つの舞台が描かれる。
    房総、東京、そして沖縄。
    そこに登場する3人の男たちと、彼らと関わる人々。
    前歴不詳の男たちをどこまで信じられるのか。
    一体この3人の中に犯人はいるのか。

    この3つの舞台は全く交わることがない。
    それぞれの地にそれぞれの人間模様があって、登場人物も多いし目線もころころ変わる。
    それでも混乱させることなく物語にグッと引き込む吉田修一の文章力は見事だった。

    作者のインタビューを読むと、怒りとは大切な人を信じられない自分に対する怒りなんだと言う。
    それは分かる。この小説のテーマが怒りよりもむしろ信じられるのか信じられないのかだと言うのは間違いない。
    それでもやはり、犯人の怒りが何だったのかすくい取ってほしかった。そうでもしないとやりきれないじゃないか。

    テーマとしては悪くない。
    新聞小説としても躍動感を求めるならこれ位センセーショナルに書かないと受け入れられないのかもしれない。
    でももうちょっと他の書き方がなかったのだろうか。
    なんだかもったいない。

    「悪人」が好きな人なら、お勧め。
    かなりエンタメ度が高いので満足できると思う。
    今回の評価はちょっと辛口です・・・。

  • 八王子で起きた夫婦殺人事件。
    惨殺現場には血文字で「怒」の文字が
    残されていた。
    事件から1年後の夏、物語は始まる。
    逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?

    数人の登場人物の物語が並行して進んでいく
    のですが、殺人事件とは関係のない人たちだったのに
    それでもこういった事件はどこか別の全く
    関係ない所にも影を落として哀しい
    影響を与えるんだな…と。

    自分の身近に細かい素性のわからない
    少し前に知り合った人物がいて
    親しくなり相手に対してどんどん興味がわき、
    愛情や友情といった感情を抱くようになっても
    相手は過去を語ろうとしてくれない。
    そんな時に相手に一年前に起きた惨殺事件の犯人との
    共通点を見つけてしまったら…

    ただ、その想いだけで相手を信じられるかというと…
    人を信じられない人は、結局人に信じてもらえない
    のはわかるのですが、人を信じ切るって本当に難しい。
    それぞれの登場人物と自分の立場を置き換えたら
    やはり信じるの難しかっただろうなぁ、と…
    それぞれ人物の中にある「怒り」を思うと
    読み終わりはあまりに哀しい気がします。

    帯にあった「身近な人ほどなぜか大切にできない」
    という一文がすごく内容を表現していると思いました。
    謎が謎のまま終わっている点が多々あれど
    (わざとだと思うのですが)
    ぐいぐい読ませる面白さでした。
    この作者さんの他の作品も読んでみよう…

  • 結局犯人の怒の意味はわからなかったけど、人間の感情というものがどれほど激しくて衝動的でこんなにも人を突き動かすものなのかとしみじみ感じた。登場人物それぞれの怒りを考えると、何がその人にとっていちばん大事で、何を守るのか、正しいとか正しくないとかの理性よりも感情が勝ってしまうのが怒りなのかも。
    自分の愛する人大切な人を信じたい。でも信じきれない。なんで最後まで信じてあげなかったのかという後悔。そんな自分に対しての怒り。その辺の人間らしさがすごーく描かれていて面白かった。吉田さんの文体は癖がなくて読みやすい。だからこそ真っ直ぐ心に入ってくる。
    自分はどこまで人を信じられるかわからないけど、やっぱり信じたい。

  • 自分のすぐ近くに、少し前に現れた素性のわからない人物がいる。
    その人物に興味が湧けば湧くほど、愛情が深くなればなるほど、過去を知りたくなる。
    が、その人物は一切、過去を語らない。
    そんなとき、1年前から逃亡を続ける犯人と共通点があるような気がしてきたら…
    相手が過去を隠せば隠すほど、犯人かもしれない、犯人だと思う…と不安になり…
    何も知らない相手、ただ目の前にいるその姿だけで信じ切れるか…

    一気に読み切りました!

  • 信じる、信じない。
    信じたい、でも信じられない。

    他人を信じられなくなり、大切なものを失うことになる人間。
    最後まで信じ切ることで、失いかけたものを手放さずに済んだ人々。
    「怒り」は、犯罪を起こす要因にもなるし、他人を守る衝動を突き動かすことにもなる。

    八王子夫婦殺害事件の犯人逮捕に向かって警察が迫り来る直前、思わぬ形で新たな事件が引き起こされる。
    それは彼にとって、必然だったのか、それとも偶然だったのか。

    三つのストーリーは最後まで交差することはないのだけれど、それぞれの人の持つ感情の揺れ具合は似ている。
    ただし、どこまで人を信じ切れるか、その思いの強弱が、切ない終わりを迎えるか、幸せな結末を迎えるかの分岐点になる。

    吉田修一の作品の中では、「悪人」に近い内容のものだと思うが、最後まで面白く読めた。

  • 事件の真相が闇の中なのはやはりすっきりしない。
    信じるってなんなのか。

  • いいようのないやるせなさでいっぱいです。でも、うまく着地しないほうが人が生きている社会のあり様なのかも。山神ってなんだったんですかね。

  • 真相にじわじわと迫っていく展開に引き込まれて一気読み。
    おもしろかった。
    タイトルの「怒り」が何に対して抱いていたのかが明らかにならずちょっとだけ消化不良かも。
    それぞれの生活はどんな展開があってもまた続く訳で、希望があれば切なさもあった。
    みんな幸せになるといいなぁ。

  • それぞれの結末を向かえる3つ、いや4つのエピソード
    人を信じることの難しさ、その意味を考えさせられます

    重い話なのに、読み進めずにはいられなくなる
    裏切られたとき、それが怒りへと転化するかしないか、その差はどこにあるのか?

  • テレビの公開捜査で見た殺人犯に、信じる気持ちが揺れ動く人々の姿を残酷なまでに描ききったストーリー完結編。

    ミステリーや犯人探しの小説にとどまらず、何か重苦しく切ないものを胸に残していった作品でした。
    人間のきれいじゃない心の部分、そして純粋で無垢な部分の両方がわかりすぎるほどわかりすぎて、やるせない気持ちになりました。
    きっと彼らももう少し自分自身を愛して信じることができていたら、愛する人のことも信じていけたのでは…
    千葉編、沖縄編、東京編と、それぞれ違う行く末になっているけれど、きっと彼らは同じ気持ちを抱いているのではと感慨深くなりました。

    映画がとても楽しみです。

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