マカン・マランのゆるりとした空気に浸りたくて、再び訪れた
文中にマカン・マランを表して、 "まるで深い海の底のようだ" という記述がある
'"形も色も違う魚たちが、思い思いに揺蕩っている。少しでも弱いものを皆でつつきまわそうとする殺伐さがどこにもない "と
何と的確に言い得ていることだろう
だからこそいろんな悩みを抱え、肩をいからせ闘っている人が、この部屋に入り、シャールさんを前にすると、堰を切ったように堪えていた涙をこぼす
自分を殺し、引きつった愛想笑いを浮かべ相槌を打つことで、職場での居場所を保っていた派遣社員の真奈
自分は兄の代わり、できの悪い劣化コピーでしかないとうつむき肩を震わせる漫画家志望の裕紀
発育障害の疑いがある一人息子のために一生懸命に頑張るあまり
息子を追い詰めてしまう未央
本当にみんな一生懸命生きている! 生きていくってこんなにしんどくて、つらいのかと思うくらい一生懸命
読んでいる私まで胸が苦しく、泣きたくなるほど
でも、シャールさんは、そんな人たちの肩に手を置き、静かに言ってくれる
☆ 充分ー。それだけで充分よ
☆ もうがんばらなくていいんじゃないかしら。目一杯がんばった
なら、もうがんばらなくていいのよ
☆ 生きていくのって、寂しいのよ。だって、世の中は、儘ならな
いことだらけじゃない。どんなに思い合ってても、分からない
ことはたくさんあるし。
☆ 幸福の裏には、いつも寂寥が潜んでいるの。でも、人生って
きっとそんなものなのよ。だから、私たちは一生懸命になれる
のかもしれないし
☆ 思い詰める必要はないのよ。一旦力を抜かなきゃ、新しい力は
湧かないものよ。たまにはサボりなさい
シャールさんの存在って、暗い入江に立つ灯台のようだと思った
迷いそうな時、さりげなく道を示してくれる
そして、しんどいのは私だけじゃないんだ。ゆっくり進めばいいんだと勇気を与えてくれる
心にしみじみと沁み込んでいくような読後感が心地よい
- 感想投稿日 : 2019年7月19日
- 読了日 : 2019年7月19日
- 本棚登録日 : 2019年7月18日
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