銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫 た 43-1)

著者 :
  • 幻冬舎 (2010年8月5日発売)
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タイトルの「 銀二貫」に込められた深い意味が分かった

「 その仇討ち 銀二貫で買わせて頂きとうおます」
仇討ちの場で寒天問屋主人の和助に救われた鶴之輔改め松吉の半生
武士の長男としての身分を捨て、商家の丁稚として生きていく覚悟の裏には、常に天満天神宮の再建のために寄進するはずだった銀二貫で買われたという負い目があった
しかし、いつかは天満天神さんと寒天問屋井川屋に恩返しをと精進に精進を重ねる

トコロテンを寒晒ししたものが、寒天
もとは、ゆるい液体のものにとろみをつけるだけの寒天が、松吉と半兵衛の何年もに渡る努力と研究の末、 今でいう" あんみつ" や練り羊羹に使われる硬さの糸寒天を完成させる過程には感動した

刀で命のやり取りをして決着をつけるのは侍
知恵と才覚を絞り、商いの上で決着をつけるのが商人という理の通り、井川屋の主人和助は、また天満天神の再建をと貯め始めた銀二貫を、その後も大火の被害に遭った伏見の美濃志摩屋 の見舞いや原村の寒天場 半兵衛が新しい天草の仕入れ先を見つけ手配するのに用立てる
決して、お金に執着することなく、ここぞという所にぽんと用立てる和助のお金を動かす裁量には唸ってしまった

商人にとって大切なことは、始末・信用・神信心の言葉通り、22年かかって、天満天神さんに「銀二貫」寄進することが叶う

物語の発端となった仇討ちを銀二貫で売った側の建部玄武の話も出てくる
仇討ちを売ることによって得た銀二貫は、美濃苗村の新田開発に役立てられ青々とした水をたたえた水田になる

銀二貫が方々でいろんな事業に生まれ変わり、役立てられ銀二貫以上の働きをする
まさしくこの話のタイトルが、「銀二貫」の所以である

最後の最後の和助と番頭善次郎の会話がこの本のテーマであるかのように洒落ているがネタバレになるのでひ・み・つ

高田さんの本の登場人物は、町人や商人が多いが、それぞれに誇りを持った生き方をしていて、読んでいて背筋が伸びる気がする



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月11日
読了日 : 2019年12月10日
本棚登録日 : 2019年12月5日

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