【誰かが薔薇を荒らす】のための再読。
毎晩、眠るために意識を手放している。睡眠とは死の近似であり、亜型ではないかと思う。目覚めるたびに、自分が何者であるかを思い出す。それが生きている証なのかもしれない。
けれども、体はなく、形はなく、俤はなくとも、心は大気中にこまやかに拡散することなくそこにあり続け、コオロギが部屋の片隅で鳴き、庭で薔薇が芳香を放つように、死者も生者と同じように呼吸をしている。やがて過去と現在が擦れ違う空間は裏返り、現在と未来は縒り合わされる。そのとき彼らの行路は再び交差するだろう。
祭壇を通る風の音に耳を澄ませ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
スペイン・ポルトガル
- 感想投稿日 : 2016年1月9日
- 読了日 : 2016年1月6日
- 本棚登録日 : 2016年1月9日
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