表題作のみ再読。白い歯を見せて巨獣みたいに腹を波うたせる海がある。その向こうにはなにもない。そこで地球は欠け、その先に飛びたった鳥たちも決して帰還することはなく、世界とは自分のいるこの狭くて小さな砂浜のことでしかない。そんなはじまりもおわりも見通せない場所に取り残される。たったひとりで。それでもなにかを期待し、青い空間に身を投げて溺れても、助けはどこからもやってこない。海のように蒼ざめ震えながら浜辺に戻り、頭上に輝く暗黒の太陽を仰いだとき、そこに絶望という名を見つける痛み。悲痛な叫びが耳の奥でこだまする。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
フランス
- 感想投稿日 : 2021年3月31日
- 読了日 : 2021年3月31日
- 本棚登録日 : 2021年3月31日
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