海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2006年10月12日発売)
3.69
  • (55)
  • (95)
  • (114)
  • (12)
  • (1)
本棚登録 : 927
感想 : 102

表題作のみ再読。白い歯を見せて巨獣みたいに腹を波うたせる海がある。その向こうにはなにもない。そこで地球は欠け、その先に飛びたった鳥たちも決して帰還することはなく、世界とは自分のいるこの狭くて小さな砂浜のことでしかない。そんなはじまりもおわりも見通せない場所に取り残される。たったひとりで。それでもなにかを期待し、青い空間に身を投げて溺れても、助けはどこからもやってこない。海のように蒼ざめ震えながら浜辺に戻り、頭上に輝く暗黒の太陽を仰いだとき、そこに絶望という名を見つける痛み。悲痛な叫びが耳の奥でこだまする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: フランス
感想投稿日 : 2021年3月31日
読了日 : 2021年3月31日
本棚登録日 : 2021年3月31日

みんなの感想をみる

ツイートする