普段、私たちが話している日本語ってなんだろうって、改めて考えた本でもありました。
ろう者がネイティブに使っている手話は、私たち聴者が普段使っている日本語とは文法やコトバの意味が違う全く異なる言語だという考え方があります。一般に、ろう学校や手話教室などで習う手話は、「日本語手話」といわれて、ネイティブの「日本手話」と区別されています。
そこらへんの話は、学問的にもムーブメント的にもいろいろあるのですが、まあフツーはぴんとこないかも。
本書では、手話と聴者の日本語の微妙な(時には大きな)ズレの事例集で、読んでるうちに「なるほど。違うコトバだ」ということがジワジワ感じられるという趣向になっています。
たとえば・・・
聴者「9時10分前に来てください」
ろう者「9時7分に到着したのに、どうして聴者は怒っているのか?」
聴者「ちょっとわからないですね~」
ろう者「ちょっと、わからないだけなのに、どうして聴者はできないというのか!(怒)」
聴者「醤油がもうないわ!買わないと」
ろう者「まだ少し残っているのに、目が悪いの?」
(ろう者には、「ない」はゼロの意味」
聴者「朝ごはん食べた?」
ろう者「食べてない。パンとコーヒーを食べてきたよ」
聴者「そろそろ、お昼にしましょう」
ろう者「お昼に、何をするの?」
読んでいくと、話コトバの慣用的な言い回しというのは非論理的だなあということや、日本語というのは相手に「察し」を求める曖昧な言い方が多いんだなあということにも気づきます。
手話がわかる、わからないに関わらず、職場などでろうの方とのコミュニケーションがなんかしっくりこないんだよなあ~というような経験がある方。もしかしたら、聴こえる人の日本語と、聴こえない人の「日本語」のズレのせいかもしれませんよ。★★★★(三)
- 感想投稿日 : 2011年2月10日
- 読了日 : 2011年2月10日
- 本棚登録日 : 2011年2月10日
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