普通に面白かった。エンタメ小説として。
親友の自殺を目の当たりにしたという同級生の告白を聞いて、「人の死が見たい」と思った女子高生の由紀と敦子は、それぞれ病院のボランティアと老人ホームに働きに行くことにする。果たして、二人がそこで目にしたものは…。
メンタルが豆腐なので、過激な展開の話とか後味が悪い話は読みたくない方なのですが、必要に迫られて読みました。イヤミスの女王とか聞いてかなりビビっていたので、薄目でネタバレっぽいものを少しだけ読んで心の準備をしてから、こわごわ読み始めました。が、読み終わってみれば、思ったよりもメンタルへの衝撃も少なく、文章も読みやすく、普通にとても面白かったです。そういうふうに身構えて読んでいたせいなのかもしれませんが。
(以下、うっすらネタバレあり)
*で区切られる文章の転換については、ネタバレを見ていたのでスムーズに視点を切り替えることが出来ましたが、気づかずに読んでいたら、分かりにくくてイライラしたかもしれません。
うっすらネタバレを見たおかげかどうか、そこそこ伏線を拾えていたような気がするので、最後の畳みかけのネタ明かしの部分では、パズルがはまっていくような感覚で、展開を楽しむことができました。
ただ、なんというか、リアリティを求めたり、「生」について考えるといった類の読書ではなく、コナンを読んでいるような感じで、ミステリーの構造を楽しむ、といった読書ではあると思います。そういう目線で見れば、色々な伏線が浮き彫りになってくる様は、楽しく、それに伴い、由紀と敦子の友情がまるで美しいもののように昇華されていく様も、とても心地よいです。
最後のどんでん返しは、想像力に訴えかけるほどもキャラが立っていなかったので、ふーんという感じでした。(自分の中でリアリティを以って受け止められていないです。)
因果応報、という言葉が出てきますが、個人的には全体を通して敦子はさほど悪ではないような。
確かに死因の一つではあるけれど、敦子自身がそのことに微塵も気づかなそうなので、その後ものうのうと幸せに暮らせそうですね。
由紀は境遇が可哀そうなので応援したいと思いましたが、いやお前はダメだってなりました。
おっさんは何も悪いことをしていないので因果応報には当てはまらないはずなのに、色々と不幸が降って湧いてきていて、なんでだってなりました。それはそれでリアリティなのかもしれませんが。その分、今後に幸せになる予感を匂わせて、ということなのでしょう。
病院の二人の男の子が好きでした。
由紀の小説のくだりはいいですね。感動しました。
- 感想投稿日 : 2020年1月28日
- 読了日 : 2020年1月14日
- 本棚登録日 : 2020年1月14日
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