鉢の木 (日本の物語絵本 16)

  • ポプラ社 (2005年11月1日発売)
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感想 : 12
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上野の国(群馬県)佐野の里のあたりで、ひとりの修行僧が雪の中立ち尽くした。
修行僧は近くの家を訪ね、女の人に一夜の宿を頼む。
女の人は、一存では決められないと言い、修行僧はあるじが帰ってくるまで軒先で待つ。
やがて帰ってきたあるじは、あばら家でとても人を泊められるものではないので、十八町(約2キロ)ほど行ったところの宿場に行ってほしいと断るが、妻に咎められ、思い直して僧を泊めることにする。
貧しくて暖を取る薪もないので、あるじは大事にしていた梅・桜・松の盆栽を切り、僧を暖めるいろりの薪とした。
深く感じ入った修行僧は、あるじに名を尋ね、鎌倉に来る際は尋ねるように言い、家を去る。

その年の春、関東八か国の大名、小名にむかい、軍勢を引き連れただちに鎌倉へ馳せ参ずるように、幕府からのお触れがでた。
あばら家のあるじである常世も、色あせた武具によぼよぼの老馬といったそまつないでたちで、周囲にあざけられながらも真っ先に馳せ参ずるが…。



この話、小2の教科書(しかも上巻)に載っける光村さんいかつい。難しすぎんか?
めちゃくちゃ武士道といった内容です。日本人の好きな質素倹約心意気、みたいなお話。好きです。(日本人なので)

西本鶏介さんのあとがきより。
・「鉢の木」は伝説より謡曲によって広く知られている物語。
・作者は不明
・武士道を鼓吹する内容がもてはやされ、江戸時代には近松門左衛門もこの謡曲を脚色して、「最明寺殿百人上臈」という浄瑠璃を書き、竹本座で上演しているほどで(元禄十六年)、それ以来ますます有名になり、謡曲ばかりか上野の国の伝説として語りつがれてきた
・上野の国佐野の住人、佐野源左衛門常世は実在しない架空の人物
・最明寺入道時頼の諸国めぐり伝説の一つであったものを佐野の伝説として僧侶や土地の人たちが語り伝えたと言われている
・修行僧は、鎌倉幕府中期の執権として活躍した北条時頼(1227~1263)。執権政治と北条氏の権力を増大させた武将として知られ、執権職を退いたのち、出家して最明寺入道となる。独裁的であっても、民衆の保護に力を入れた政治家といして高く評価されていたことから、出家後、全国を回って庶民の暮らしを視察したという伝説が生まれた

などなど。
面白いです。

ストーリーとしては、大事にしていた梅、桜、松の盆栽を燃やして暖を取ったことから、加賀の国の梅田、越中の国の桜井、上野の国の松枝と、梅、桜、松の名のついた領地をもらうのエモい。
でも、先日真田の領地の本を読んだせいか、特に悪いことしていないのにいきなり領地を取り上げられた三国の元の領地の主のことを思うと少し可哀そうですね。笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2021年11月30日
読了日 : 2021年11月30日
本棚登録日 : 2020年5月24日

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