ミリ-のすてきなぼうし

  • ビーエル出版 (2009年6月1日発売)
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感想 : 89
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ミリーは学校の帰り、帽子屋さんで見かけた、色とりどりの羽のついた帽子を気に入り、買うことにしました。
「おねだんは、きゅうまん きゅうせん きゅうひゃく きゅうじゅう きゅうえんに なります。」
「あの、もうすこし やすいの ありますか?」
ミリーのおさいふはからっぽです。
そこで店長さんは、ミリーのために特別な帽子を持ってきてくれました。
「おおきさも かたちも いろも じゆうじざい。おきゃくさまの そうぞうしだいで どんな ぼうしにもなる、すばらしい ぼうしです」
早速その帽子をかぶって外へ出たミリー。
さて、ミリーが買ったのはいったいどんな帽子だったのでしょうか?


この本、以前にも読んだことがあると思うのですが、内容を忘れていて、今回改めてじっくり読んで、途中で「か、可愛いー!!」を連呼してしまいました。
ミリーというからには、なんとなく外国の作家さんの絵本かと思っていたら、きたむらさとしさんという日本の方の作品。きたむらさんは30年近くイギリスにいらした方だそうで、外国ぽい作風に納得してしまったのでした。町並みも家庭もイギリスの風景なのでしょうね。この絵本も奥付が外国の絵本と同じような感じで入っているので、初出はイギリスだったのでしょうか。海外の絵本は、独特の雰囲気があって素敵ですよね。

さて、好きなところがたくさんあるのですが、まず絵が可愛いです。
線の描き方が素敵。色の塗り方も素敵。どうやって描いているのかな?
ミリーがお金を持っていないと知って、天井を見上げてしまう店長。でもちゃんと、ミリーのための帽子を用意してくれる店長。さらに、「箱に入れてお包みしますか?」とまで言う店長。なかなかのイギリス紳士です。
二人して天井を見上げてしまうところで、「おもしろい もようの てんじょうです。」もよかったです。ウケる。

以下ネタバレですが、ミリーの帽子は想像の帽子。
ミリーは素敵な帽子にするために、色々想像してみます。
ほしかった羽根の帽子。でももっと羽がついてるの!
ページをめくると、一面ミリーとくじゃくの帽子!
ミリーの想像力がバッと羽根を広げた瞬間です。迫力。
ケーキ屋さんの前を通るとケーキの帽子、お花屋さんではお花の帽子。
でももっとすごいのが、ミリーが帽子をかぶっているのは自分だけじゃないと気づくところ。
いろんな人の頭の上に、いろんな形の帽子が乗っている絵が本当に好き!ビジネスマンはビジネスの(ビル建設に関わる仕事?)、偉そうなおじさんには自分の銅像の、子どもたちには、恐竜やかたつむりやレーシングカーの帽子。喋りながら歩いている女の人の頭の上に、カンガルーや鳥の親子が乗っているのも面白い。野生動物の話をしているの?
くらくて寂しいみずたまりを乗せたおばあさんが、ミリーに微笑みかけられることで、ミリーの帽子から鳥や魚が飛び出して、おばあさんの帽子に飛びうつるところは本当に素敵。こちらまで笑顔になります。

うちに帰って、「ママ、わたしの あたらしい ぼうし、みて!」と言われたママの応えも素敵です。
(私なら絶対、「は?帽子?どこにあるん?」って言うと思います。)
(そして、サラダを持って、夕食の手伝いをしているパパも推せる。)

「そうです。
だれだって もっているのです。じぶんだけの すてきな ぼうしを。」

結びの文も素敵だし、なんなら頭にペンギンを乗せているパパもいいですね。

読み聞かせ、約7分です。

さて、『ミリーのすてきなぼうし』は光村の2年生の国語教科書に載っているのですが、教科書なので、きっとイラストもかなりカットされているだろうと思います。
この素敵さを伝えるためには、ぜひカットせずに見てほしい~!
絵本って、やっぱり絵と文と合わせて一つの作品だもの、と思うのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2020年7月15日
読了日 : 2020年7月15日
本棚登録日 : 2020年7月12日

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