ローマ人の物語 (15) パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2004年10月28日発売)
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感想 : 95
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アウグストゥスの45歳から57歳まで。虚弱ながら77歳まで生きたという人であるから、人生では一番脂ののった時期なのでしょうか。一見共和制を装いながら、帝政を浸透させていくために、国の統治に於いて色々な対策や改革を推し進めていきました。
この時代にも現代に通じるような、少子化対策があったり、パクス・ロマーナのシンボル建築として平和の祭壇を建てたりしました。そして、その為の安全保障として軍事の再編成にあたりました。さらに、一律の関税を課し、流通を活発にしてローマを中心とした一大経済圏を築いたりしました。
税制も売り上げ税のような税だったり、史上初の相続税もあったりということでしたが、税率が低く単純明解な税の制度だったのと、その計算のための幼児教育の徹底化だったせいなのか…ということで、税務員は少数で脱税摘発要員も存在しないと書かれています。パナマ文書なるものの存在が騒がれ、常にマルサが活躍する今の世の中から見れば、理想的な仕組みだったと言えるのでしょうか。
この巻の本の表紙を飾る銅貨の人物は、アグリッパ。アウグストゥスの右腕と言われた人でした。30年もの間アウグストゥスの足りない部分を補い、これまで支えたアグリッパでしたが、急逝してしまいます。アグリッパ以外にもマエケナスという左腕もいたのですが、相次いで喪います。その後に右腕となったのは義理の息子たち、ティベリウスとドウルーススの兄弟でしたが、事故で弟の方を失う不遇があり、兄のティベリウスもアウグストゥスの命に背き36歳で引退してしまいます。こうして、広大なローマの統治を孤軍奮闘で進めることになったのでした。
この他、指導者に求められる資質で、カエサルと比べてアウグストゥスに足りない資質は何か?いう考察もあり、興味を惹かれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 塩野七生
感想投稿日 : 2017年11月26日
読了日 : 2017年11月23日
本棚登録日 : 2017年11月26日

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