前の巻で冥界に降りた主人公の顔回でしたが、妤と子蓉、二人とも連れて帰ることは冥界の決まりでできないという難問が彼の前に立ちはだかります。今回は「眩」の巻とということで、めまいのような人を惑わす場面がテーマになります。この巻での山場は何といっても顔回が子蓉の提案を受け入れ、冥界から帰るときに驚くべき術を実行する場面です。この場面では常に冷静な顔回が熱い感情をほとばしらせるのですから見逃せません。作者はここで、炎神の祝融や最強の媚女というべき子蓉、そして少女でありながら秘めた強い力を持つ妤と3人の女性を全面に出して顔回と対峙させます。女神まで含む女性たちの強さと男性との釣り合いを引き合いに出して述べている部分は、作者の女性観がにじみでているようで興味深く読みました。後半では、一転して孔子の政治的判断が色濃く出る場面が登場します。ひとりの武将の行動にこれがどう影響してゆくのか、孔子や顔回等、願氏一族の行く末を見守る太長老の言動も気になるところです。
読書状況:読み終わった
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酒見賢一
- 感想投稿日 : 2012年8月4日
- 読了日 : 2012年8月4日
- 本棚登録日 : 2012年8月4日
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