巡礼

著者 :
  • 新潮社 (2009年8月28日発売)
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本棚登録 : 337
感想 : 63
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空き家問題に付随するゴミ屋敷と目される現代の社会問題がこの物語の中心を成しています。ゴミ屋敷に住む人とその周辺の住人たちを状況を対比させ、その人たちの過去から現在に至った過程を描いています。
ゴミ屋敷の住人である下山忠市は戦前に生まれ、戦後に思春期を迎えた世代。突然の世の中の価値観の転換に戸惑いながらも、高度成長時代を実家である丸亀屋を維持して生きてきました。その彼の一生を追う形で物語は進んでいきますが、昭和という年代とともに生きた彼の一生がノスタルジーを醸し出しています。
何故、ゴミに埋もれて暮らすようになったのか今に至る心境と、その周辺の住人たちの戸惑いや苛立ち、怒りなどの心理の動きが橋本治さん特有の詳細な分析による筆致で書かれています。終章の「巡礼」の部分で物語は解決を見ますが、晩年のこの辺りの心境などあっさりしていてもう少しじっくり書いて欲しかった気がします。
最後に橋本治さん、亡くなるのが少し早かったのでは…
もっとこの先活躍して欲しかったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 橋本 治
感想投稿日 : 2019年10月6日
読了日 : 2019年10月6日
本棚登録日 : 2019年10月6日

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