サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社 (2016年9月8日発売)
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言語が虚構を産み、虚構が神話を産み、神話が共同生活を産み、共同生活が書物を産み、書物が帝国を産み、帝国が貨幣を産む。
人類進化の著作は多々あれど、物理的な変化や文化の痕跡を語るにとどまるものがほとんどだが、
本書は過去、何が起こりどう変わったのか。具体的事例を豊富に人類史を物語として語る。

例えば『農耕生活より狩猟生活の方が楽な生活であった』というのは昨今よく聞く話だが、
本書は具体的に農耕が100人の豊かな生活から全てを奪い、気づいたときには1000人を苦しめる生活に至る論理を語る。

そうして人が集まるところに神話がうまれ、もしくは神話があるところに人が集まり。
人の集まりは備えと蓄えを必要とし、もしくは備えと蓄えが可能なところに人が集まり。
備えと蓄えは過去と未来に強く依存するという必要性から、書記体系がうまれる。
もしくは書記体系が存在するからこそ、効率的に備え蓄えることができるようになる。
かように原因と結果が相互に影響しあい、サピエンスの発達は猛スピードでなされてきた。

今や国家の威光は隅々まで届き、貨幣が存在しない地域は数える程度しかない。
合わせて進化した数々の制度は、もはやメリットとデメリットを比較するまでもなく、変えることはできても引き返すことはできない。
人類史は始まったときから全て、贅沢品を必需品にして新たな苦楽を生じさせるということを繰り返しているにすぎない。
だが、積み重なっているものはある。
科学と市場経済は、この螺旋に終着点を見出すことができるのか。
下巻に続く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年9月16日
読了日 : 2019年9月16日
本棚登録日 : 2019年9月16日

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