警視庁・特命捜査対策室の征陸智己と八尋和爾は、懸命な捜査の末“ノナタワー落成式襲撃事件”の首謀者アブラム・ベッカムの元へと辿り着く。だが、アブラムは厚生省が派遣した制圧無人機により殺害され、八尋は責任をとるかたちで警視庁を去った。そして2091年、警察は解体され、新たに厚生省公安局刑事課所属となった征陸は、いまだ正義の在り処を追い求めていたのだが――スピンオフノベライズシリーズ、征陸篇完結。
色相が濁りそうな描写もあるが、深見さん高羽さんノベライズより吉上版が何よりサイコパスらしいと感じる。旧世界と新世界の狭間に生まれ、どちらにも染まりきれない征陸が社会を受け止める視線は、読者の視点そのものともいえる。かつての親爺・八尋を追い捜査を続ける中で、シビュラシステムそのものについて、社会のありかたについて考え自身の行動や信念を今一度考えることになる征陸。八尋の考えを完全に理解できる人物であり似た境遇に立たされても、家族を守るために異なる選択をするというのは、宜野座の過去を知る側からすると意外でもあった。あくまで刑事として、執行官として生きる理由に家族があったとは。最期の瞬間まで彼が自分の心に従い生きていたことが分かって涙が止まらない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
国内小説
- 感想投稿日 : 2016年12月6日
- 読了日 : 2016年12月6日
- 本棚登録日 : 2016年12月6日
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