夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2000年5月19日発売)
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感想 : 2365
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 かなり以前、中田永一さんの『くちびるに歌を』を読み、後になって乙一さんの別名義だと知りました。作風による使い分け? と思いながら、これまで乙一さん作品は未読でした。
 本書が、乙一さんが1996年に16歳で執筆したデビュー作品という事実に驚き、空恐ろしさを覚えました。

 表題作「夏と花火と私の死体」は、語り手が〝死体(わたし)〟! この設定と物語の完成度の高さに、思わず唸ってしまいました。まさしく、16歳が世間に知らしめた衝撃的作品でした。
 善悪の判断もままならない小さな子どもの無邪気さと残虐性、死んだわたしの淡々とした語り口、予想外の驚愕の結末など、構成や情景描写の秀逸さも含めて感心するばかりです。

 もう一編「優子」は、少し雰囲気が違います。情感あふれ、質素ながら趣のある筆致で、ノスタルジックな時代と情景が心に染みてくるようです。
 亡き妻の幻影を人形の中に見ている男と使用人の娘。狂気に終止符を打とうと娘が行動し、またしても予想外の結末がやってきます。誰が狂っているのか? どこまでが幻覚? 真実? いろんな解釈が可能な設定こそが、筆者のねらいとするところだったのでしょうか‥。

 2編ともに、若き非凡さに驚嘆させられる作品でした。乙一さん、まだ40代半ばなのですね。推理、ホラー、恋愛やライトノベルまで作風が広いということなので、もう少し他作品を読んでみたいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月16日
読了日 : 2023年3月16日
本棚登録日 : 2023年3月16日

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コメント 2件

チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2023/05/02

こちらにも…こんばんは~♪
本と、珈琲さん。この作品面白かったです!!
「優子」のラストは、よく分かりにくくて、怖かったです~
((( ;゚Д゚)))
なる程です~いろんな解釈が、可能な、設定なんですね~
どこまでが幻覚??誰が狂ってる??って頭の中でグルグル(@_@)なりました〰️(笑)

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/05/02

ご丁寧にありがとうございます。
チーニャさん、とっても義理堅いお方ですこと!

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