太陽の塔 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年6月1日発売)
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本棚登録 : 19976
感想 : 2150
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 森見登美彦さんの本作(2003)は、デビュー作にして日本ファンタジーノベル大賞受賞作。実は『夜は短し歩けよ乙女』『熱帯』が私にあまり響かず、本作にリベンジです。復讐ではありません。

 あぁ何だろうコイツ、嫌なタイプだな‥。何せ冒頭から、「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ」という手記の体裁で始まるのですから‥。
 独善ぶり、道徳的優位性感情、高慢さを発揮する「私」は、京都大学を休学中の五回生です。

 モテたいのにモテない。(当然だよね?) それでも彼は、「自分がモテないのは世間のほうがまちがっている」とのたまう。(は?) そんな彼にも、奇跡的に彼女・水尾さんがいた時期があり、数ヶ月で玉砕。拒否された事実が解せず、「水尾さん研究」と称して観察を続ける。(完璧なストーカーですよね?) しかし彼にとっては、謎を究明する知的人間の正当な行為なのでした。(すごい理屈!)

 他にも、冷静な研究のために対象との直接的接触は避ける(むむっ、ギリセーフか?) 彼女は私の偉大さを理解できないがゆえに否定せざるを得なかった。これは研究であり、断ち切れない恋心とは無縁(おめでたい!) 自分が稀有な存在で選ばれた人間(ウケるー!) この手記が万人の共感を得るはず(この自信はどこから来る?)等々‥

 こんなふうに、彼の主観と側から見た客観はことごとくズレていて、もはや不快さを超越した奇想天外のギャグです。もしかしたら、これらを笑えるか腹を立てるかが、本作を好むか好まざるかの分岐かもしれません。
 個人的には、内容のコミカルさにニヤリとはするものの、少し堅苦しい文章で、やはり響いた感が今一つ得られませんでした。ごめんなさい。
 でも、終末に見せる哀愁漂い、かつ爽やかな雰囲気はよかったです。それに、水尾さんがゾッコンする「太陽の塔」に対しては畏怖し、愛しつつ幻影を見るんですね。

 同じ学生生活を描いた伊坂幸太郎さんの『砂漠』や、同じ京大出身で京都所縁で作風が似てる(?)万城目学さんを思い浮かべました。
 まさか「きのこの山」×「たけのこの里」論争じゃあるまいし、好みの問題ですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年4月11日
読了日 : 2024年4月11日
本棚登録日 : 2024年4月11日

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