君主論 改版: 新訳 (中公文庫 マ 2-3 BIBLIO S)

  • 中央公論新社 (2002年4月25日発売)
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2012年24冊目。

『マキアヴェリズム』というと、「目的のためなら手段を選ばない非道なリーダーシップ」、というイメージがある。
それでも長く名著とされてきたからには、そこには何かしらの真実味があるからであり、賛同できない内容があるとしても、少なくとも反面教師としての価値はあると思い読んでみた。

マキアヴェリは著書の中で、

「わたしのねらいは、読む人が役に立つものを書くことであって、物事についての想像の世界のことより、生々しい真実を追うほうがふさわしいと、わたしは思う。これまで多くの人は、現実のさまを見もせず、知りもせずに、共和国や君主国のことを想像で論じてきた。しかし、人が現実に生きているのと、人間がいかに生きるべきかというのとは、はなはだかけ離れている。だから、人間いかに生きるべきかを見て、現に人が生きている現実を見逃す人間は、自立するどころか、破滅を思い知らされるのが落ちである。」

と述べている。
実際にヨーロッパ・オリエントを中心とした地域の歴史的な君主たちの政策や、動乱の時代であったイタリアの君主たちの現実の事例をふんだんに使っている点で、理想でなくリアルを語っている印象が強い。
(客観的な数値データなどは少なく、やや主観的な判断であることは否めないが。)

やはり過激に感じる内容も多いが、
「民衆になにかを説得するのは簡単だが、説得のままの状態に民衆をつなひとめておくのがむずかしい。」
「決断力のない君主は、当面の危機を回避しようとするあまり、多くの場合中立の道を選ぶ。そして、おおかたの君主が滅んでいく。」
「お追従者から身を守る手段は、真実を告げられてもけっして怒らないと人々に知ってもらうしかない。」
など、現代でも十分通じる教訓も数多い。

論証の仕方は、「共和国の場合」「君主国の場合」・・・、更には君主国の中でも「世襲で君主となった場合」「自分の武力や力量で君主となった場合」・・・など、場合分けをしてそれぞれを論じるという手法で分かりやすい。
必ず章ごとに結論を明確に示す点も読んでいて不快感がない。

現代は「サーバント・リーダーシップ」や「逆ピラミッドの底辺から支えるリーダーシップ」などが良しとされる風潮が強まっている。
トップダウン型のリーダーシップが嫌われる時代に馴染む部分もある一方で、有事の際の責任ある決断力も弱まってきているかもしれない。
その点、マキアヴェリズムを知っておくことに損はないと感じる。
情報の取捨選択の権利は読者側にあるのだから、食わず嫌いにならず触れてみる方が良いと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: リーダーシップ
感想投稿日 : 2012年3月18日
読了日 : 2012年3月18日
本棚登録日 : 2012年3月18日

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