愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1990年8月3日発売)
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米トランプ前大統領が口にしたディープステートの存在。歴史を遡ると、ジャクソン大統領暗殺未遂事件やケネディ大統領暗殺事件、ニクソン大統領の失脚をも、官僚組織や軍産複合体が主導したという説がある。

だが、村上龍は30年以上前からその存在を見抜いていたようだ。ジェローム・ウィッツ率いるグローバル企業組織体「ザ・セブン」とトウジとの闘い。狩猟社やST班の暗躍。テンポアップする展開。ラストの鮮やかさ。資本主義でも社会主義でもない、システムに対峙する第三の道。

上下巻で1000ページもあるうえ決して読みやすい小説ではないが、日本や世界がどこに向かうか、その確かな目を持ちたいと思える傑作。政治経済、薬学、軍事など多方面にわたる膨大な知識量がベースになっており、下手な経済書を読むより遥かに大きな洞察を得られる作品。

文句なしに星5つ。こんな小説書ける人は他にいないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年6月19日
読了日 : 2022年6月18日
本棚登録日 : 2022年6月12日

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