成功者K

著者 :
  • 河出書房新社 (2017年3月9日発売)
3.01
  • (11)
  • (46)
  • (94)
  • (34)
  • (16)
本棚登録 : 717
感想 : 87
4

※以下ネタバレ注意※


⚫︎受け取ったメッセージ
芥川賞受賞作家である羽田圭介氏が
芥川賞受賞で成功した「成功者K」を書くKを書く。


⚫︎あらすじ(本概要より転載)
芥川賞受賞後、TV出演190本。
すべてはこの作品のためだった。───羽田圭介

これは実話かフィクションか!?

芥川賞を受賞したKは、いきなりTVに出まくり寄ってくるファンや友人女性と次々性交する。
突如人生が変わってしまったKの運命は?



⚫︎感想
Kは成功をおさめた。
それはもう、多大なる成功だった。

最初から嘘くさい(笑)ので、
デビュー作の「黒冷水」同様、メタ構造なのだなと思いつつも、現実?!と思わせてくれるほど、リアルな心境の描写、テレビ業界の裏側、ファンとのやりとり、身バレしないように配慮などなど、羽田さんが羽田さんをモデルにした虚構なので、芥川賞受賞後経験したこと、または経験できるかもしれなかったことを、最大限に振り切って書かれている。所々細かなところでフッと鼻で笑える(終盤「丁寧な生活」とたまに声に出して言ってみた。とか)。何人もの女性と「成功」をするので、タイトルが成功者Kなのね…とか。

最後はこの「成功者K」のなかに小説「成功者K」を書いたKが出てくる。「黒冷水」では、はっきりと最後「完」というメタ構造になっていたが、こちらの作品ははっきりとは書かず、でも小説です、虚構ですよ…と匂わせて終わる。この工夫はやはり、「成功者K」が、読者にはどの程度まで本当なのか分からないようにする技巧なのだなぁと思った。

創作者は自分の何かを削って生み出す事をしている人たちだと思う。が、この作品は、読む人によっては、羽田さんのこと嫌いにならないか、心配になるくらい非常に危険な一冊であり、腹括ってらっしゃるなぁ〜と思った。「成功者K」の成功者Kも、終盤洗いざらい自分を曝け出すことで不安を解消しようとするし、ものすごくよく考えられたメタメタ作品だと思った。

ちなみに羽田圭介さんの作品のレビューで、比較的評価が低めのこの作品。でも私は嫌いじゃないです笑。性描写が生々しすぎるとか、モテすぎるとか、わざとらしすぎるとか、この小説において「〜しすぎている」部分は全て羽田さんの計算ずくの虚構なのだから、読者は「ここは本当だな」…とか妄想しながら、好き勝手に楽しんでる読めばいいのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月22日
読了日 : 2023年11月22日
本棚登録日 : 2023年11月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする