ヘヴン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2012年5月15日発売)
3.62
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本棚登録 : 374
感想 : 39
4

⚫︎受け取ったメッセージ
世界の見方は、人間の数だけ存在する

⚫︎あらすじ(本概要より転載)
2022年「ブッカー国際賞」最終候補作!

かつて見たことのない世界が待ち受ける。

芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞 ダブル受賞

<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。


⚫︎感想
対比と比喩がとても巧みな小説。
斜視である主人公は、酷いいじめにあっている。
同じくいじめに遭っている女子のコジマは、主人公の僕が斜視であること、そこ苦しみを乗り越えることに意味があると言う。「僕」も斜視であるが故にいじめられているのだと思っていたら、百瀬にそうではなく、偶然だと言われる。いじめられる対象が主人公であることに意味などないと。百瀬は強者に寄り添った世界の見方をし、コジマは弱者の立場から世界を見ている。
「僕」はその狭間で揺れる。

斜視で視野が狭いことは、二重の意味がある。斜視の手術をして視野が開けることと、世界を見る視野が開けることが重なり合い、希望を感じさせるラスト。

なぜ、反撃できないのか。
反撃する自由もあるはずなのに。
それは、そうしたくないからだ。
逆に言うと、そうできる人もいるし、実際聞いたこともある。
他人のやりたいことというのは、
千差万別であり、到底受け入れられないものもまた
存在するのである。
その存在自体を否定することはできない。
見方によっては、コジマは自分の思想や理想と違うからと言って「僕」を拒否してしまったし、百瀬は新しい視点を与えたと言える。
またラストシーンでは、弱者と見えたコジマは
非常に強い。

善悪、強弱の反転がこの小説の鍵である。

そして、その受け入れ難い見方に対して
どう対処するのかはまた千差万別である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2023年11月26日
読了日 : 2023年11月26日
本棚登録日 : 2023年11月26日

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