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今は学生でいたくなかった。コンビニでバイトし、青くない海の街でひとり暮らしを始めた。唯一のアイデンティティは深夜ラジオのリスナーってこと。期間限定のこのエセ自立で考え直すつもりが、ヘンな奴らに出会っちまった。つまずき、人づきあい、好きだって気持ち、夢……若さと生きることのすべてが詰まった長篇小説。
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心に傷を抱え、これまでの人生から逃げ出したくなって大学を休学してひとり暮らしを始めた若者が主人公の物語である。親の立場からすると、不甲斐なく、心配でたまらず、無意味な遠回りをしているように思えてしまい、つい余計なひと言を言ってしまいそうな若者たちがたくさん出てくる。序盤では、親の気持ちで、なにをぐうたらしているのだとイライラすることもあったのだが、読み進むうちに、彼らには彼らなりの譲れない矜持のようなものがあり、周りと足並みをそろえられなくても、各自なりのペースで確実に前に向かっているのだということが実感されて、応援したい気持ちに変わってくる。いくら人付き合いが苦手でも、やはり人間関係は大切だということも、身に沁みる。ラジオのリスナーではないので、そちらの熱狂ぶりは実感としては判らないが、ラジオの番組を通じた繋がりにも、見えないながら深いものがありそうである。タイトルの切実感が迫ってくる一冊でもある。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
さ行の作家
- 感想投稿日 : 2016年12月21日
- 読了日 : 2016年12月21日
- 本棚登録日 : 2016年12月21日
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