見えない鎖

著者 :
  • 潮出版社 (2010年12月2日発売)
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本棚登録 : 102
感想 : 13

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失踪した母、殺害された父。そこから悲しみの連鎖は始まった。私は“幸せ”ですか?人間の“業”とは、そして幸福とは。乱歩賞作家が問いかける、予測不能の人間ミステリー。
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主人公は、短大で栄養学を学ぶ19歳の生田有子。幼いころ母が家を出ていき、父のためにと家事をこなしてきたからか、とても19歳とは思えない大人な印象である。だが、そんな折、建設現場の警備員として働いていた父まで殺されてしまう。一体父は、だれにどんな理由で殺されなければならなかったのか。警備会社の社長で、父の友人でもある元刑事の中原の力を借りて、独自に経緯を調べ始めると、少しずつ鎖を手繰るように、思っても見なかった事実が現れてくるのだった。殺人事件の謎を追う様子はもちろん、人間関係や感情の動きが濃やかに描かれていて、人間ドラマを観ているような読み応えがある。正義とは何か、罪に見合う罰とは何か、不仕合せと不幸のこと、そして自分を信じるということについて深く考えさせられる一冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: か行の作家
感想投稿日 : 2016年7月5日
読了日 : 2016年7月5日
本棚登録日 : 2016年7月5日

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