夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

著者 :
  • 扶桑社 (2017年1月18日発売)
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本棚登録 : 2599
感想 : 344
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この感想が適切かはわからないけど、すごく良かった。なぜ適切かわからないと濁すか。それは、作者はきっと自分の人生について、夫を含めて最終的には肯定的に見ているように見えるのだが、読者である私からだと主人公だけが我慢しすぎてかわいそうだと思ってしまうから。
教員、そして家庭生活の日々の中で唯一の捌け口だった、日記を書いていたサイト。主人公はサイトを訪れた相手の欲のままに抱かれるが、ずっと後になってから最初に会った男に指摘されるまで、実はそのサイトが出会い系だと気付かない滑稽さ。たとえ主人公がその日記に日々の苦しみを綴っていても、結局はそういうキャラ作りだと思われてしまう。これってなんて酷い話なんだろう。
酷いのは夫もだ。入らないからって自分だけ咥えさせて顔射して寝る??夫とその後一緒にお風呂に入り、顔を洗っているとかならまだ愛があるけど、そんな性行為で主人公が得るのは虚しさだけだ。
顔射する人間は女性の尊厳を傷つけていると思う。もっとも、主人公がそれで快感を覚える性癖なら何も問題ない。しかしどうもこだまさんの文章を読むと、そこに主人公が快感を得ている描写がないのだ。だからかわいそうという感想が浮かんでしまうのかもしれない。
主人公がセックスで存在意義を感じるのはいい。それは勝手だ。しかしなぜ主人公に関わる全ての男、そして夫は、自分だけの欲求を押し付けばかりで、主人公と共に気持ちよくなることを考えていないのだろう。どうしてそんな男に囲まれた人生でも、主人公は肯定的に捉えられてしまうのだろう。

ここまでが、読んで悲しくなったところ。
「良かった」というのは、多くの女性が感じるであろう心の機微を文章にしてくれたこと。私も存在意義を感じたくて、気持ちよくないセックスをしたことだってある。そのとき感じた充実感と虚しさをここまで文章にしてくれた作品は今まであまり出会ったことがない。
そしてその二つの感情を私が抱いていたのは若かりし頃の話だ。この主人公で言えば、処女を捨てた頃合いか。決して結婚してからではない。過去には自暴自棄なり、教員になってからも傷つき辞めた私も、今では人並みの幸せを夫と得ている。
そう、これがすべてフィクションであるなら、私は問答無用で☆5を付けた。痒いところに手が届く最高の文学だから。ただ、実際にこの日本を生きる女性の随筆だからこそ、☆5は付けられなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・詩・日記など
感想投稿日 : 2019年10月17日
読了日 : 2019年10月17日
本棚登録日 : 2019年10月17日

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