日本料理盛付指南: 美しい盛付のための実践指導書

著者 :
  • 柴田書店 (2006年6月1日発売)
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感想 : 3
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盛付けの心得と飾り切りやあしらいの包丁技術がまなべる本なのだが、実例として載せられた日本料理の繊細なうつくしさにとにかく目をうばわれる。ちいさな金彩蛤と松の枝をつかい、盆栽のように盛りつけられた先付け。すりガラスの菓子皿に咲くひらめの薄造り。竹筒にあしらわれた鰹や蚫、松茸やすだち。青磁輪花皿を彩る華やかな前菜。糸目平椀にたゆたう白荻豆腐。 白磁平皿に盛られた西瓜やパパイヤ、いちじくに巨峰、キウイフルーツ。蜜漬けの水菓子はつややかで、刺身に添えられた花びら大根はたおやかで、椀にしずんだかにしんじょは粉雪みたい。なにもかもが優美で儚い。著者いわく「盛付とは、器のなかに風景を作ること」そこには確かに洗練された風景があった。コツは貧相でなく、かといって華美でもなく「味も量も演出も、あと少し足りないな、というくらいにとどめるのがほどよい加減」「料理は不足を尊ぶべし。盛付もしかり」と肝に銘じることだという。なにかとtoo muchになりやすいわたしとしては、あらゆる場面で心がけたい教えだ。丸いものと四角いものを対比させて見た目をキリッとさせるとか、一文字盛りは一直線でなく少しずつずらして流れをつくるとか、微妙な角度のずれや不揃いな空間の取り方で美を演出するとか、立体感や躍動感、強調したい素材の存在感の出し方とか、実用としても優れているけれど、器にひろがる景勝地をただながめているだけでもたのしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 料理/グルメ
感想投稿日 : 2012年1月16日
読了日 : 2012年1月16日
本棚登録日 : 2012年1月16日

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