アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)

著者 :
  • 早川書房 (2013年12月19日発売)
4.06
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本棚登録 : 746
感想 : 111
3

プロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿らされているかのような、とでも表現すればいいのだろうか。
登場人物のことごとくがストーリーにバチッとリンクしていく様に、いつものような気持ちよさの代わりにちょっとした強引さというか、お仕着せのご都合主義に近いものを感じてしまった。

「開かせていただき光栄です」の世界が再び展開されていることについては素直にワクワクするし、何より前作で感じた"ナイジェルのバックグラウンドが結局明かされなかったな…"という私の疑問を氷解させてくれ、おそらくは「開かせて…」を書く時に既に続編の構想も存在していたであろうことが窺える。
年月を経て、バートン先生の弟子たちがそれぞれ進むべき道に分かれていくことには、一抹の寂しさを覚える。

いずれにせよ、もう少し紙幅を費やせばさらに収まりのよい作品になったのではないだろうか。
若干収斂を急いでいるように感じられたのも、雑な印象を受けた一因だと思う。
これまで皆川博子氏の作品にはおしなべて高評価の私だが、泣いて馬謖を斬る心境で、星3つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 単行本
感想投稿日 : 2014年5月1日
読了日 : 2014年5月1日
本棚登録日 : 2014年5月1日

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